【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(8)
若い刀鍛冶は、平凡な刀鍛冶の刀を振り払った。そうすると、平凡な刀鍛冶の刀は、簡単に折れてしまったのであった。平凡な刀鍛冶は、「なぜだ」と言った。
「神様の秘伝を使って、その刀を作ったのであろうが、その刀には、足りないものがある」と、若い刀鍛冶は言った。
「足りないもの」と、平凡な刀鍛冶が訊ねると、
「才能と契約だ」と、若い刀鍛冶は答えた。
「残念ながら、お前の中には、天性の才能は存在しない。いくら、秘伝の通りに作ったところで、それは、俺の作った刀に比べれば、ただの木刀だ。魂は込めることはできない。秘伝は、俺の才能があってこそ、最高の刀を作り出す秘伝となる。そして、俺は、その天性の才能を持って、正義のために、刀を作り出すことを契約の条件として、神様より、最高の刀を作り出すことを認められたのだ。お前は、ただ、俺の真似をしたに過ぎない。その刀はニセモノだ」と、若い刀鍛冶は言った。
「もし、お前が秘伝を知りたいのであれば、俺の弟子となり、俺の下で、修行を積んだのであれば、いつの日か、本当に、最高の刀を作り出せたかもしれない。とても残念なことだ」と、若い刀鍛冶は続けた。
平凡な刀鍛冶は、うな垂れ、そして、大きな声で泣いた。「私は、お前の才能を妬んだ。そして、お前のような天性の才能を持つ刀鍛冶と同時代に、私を存在させた神を恨んだ。だから、私は、お前の全てを奪おうと思った。そして、お前に私を妬ませ、私と同じ気持ちを味わらせてやろうとした」
若い刀鍛冶は、「嫉妬で、人間は成長しない。なぜ、自分を正直に見つめ、そして、成長するための努力をしようとしなかった。神様は、確かに、お前に、才能は与えなかったかもしれない。しかし、神様は、努力する者を見捨てることはしない」
平凡な刀鍛冶は、「この女性を、私の物としたのも、全て、お前に挫折なり、屈辱を与えたかったからだ。お前に勝つことができるのは、唯一、この女性の愛を手に入れることができたということだけだ。そして、お前が愛した女性を利用して、お前に、最も残酷な仕打ちをしたんだ」と言った。
平凡な刀鍛冶の妻は、全ての真実を知り、驚愕した。そして、泣いたのであった。
若い刀鍛冶は、「俺は、今でも、お前に負けたと思ったことは一度もない。残念ながら、お前に屈辱を感じたこともないし、挫折を感じたこともない。全ては、お前の自己満足に過ぎないということだよ。いま、俺の使命は、この剣を完成させなければいけないということだ。私は、私の責任において、神様との契約に違反するという過ちを犯した。だから、私の才能が取り上げられても仕方がない。しかし、俺にとって、最高の刀剣を作るということをやめることは、死、そのものなのさ。だからこそ、悪魔と契約してでも、再び、最高の刀剣を作らなければならなかった。そして、その最高の刀剣の完成の日が近づいている」と言って、自らの首に剣の刃を当てて、静かに下に引いたのであった。そして、若い刀鍛冶は、「神よ、悪魔よ、見よ、いまこそが、最高の剣の誕生のときだ」と叫んだ言って、剣を天にかざしたのであった。




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