【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(8)

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若い刀鍛冶は、平凡な刀鍛冶の刀を振り払った。そうすると、平凡な刀鍛冶の刀は、簡単に折れてしまったのであった。平凡な刀鍛冶は、「なぜだ」と言った。

「神様の秘伝を使って、その刀を作ったのであろうが、その刀には、足りないものがある」と、若い刀鍛冶は言った。

「足りないもの」と、平凡な刀鍛冶が訊ねると、

「才能と契約だ」と、若い刀鍛冶は答えた。

「残念ながら、お前の中には、天性の才能は存在しない。いくら、秘伝の通りに作ったところで、それは、俺の作った刀に比べれば、ただの木刀だ。魂は込めることはできない。秘伝は、俺の才能があってこそ、最高の刀を作り出す秘伝となる。そして、俺は、その天性の才能を持って、正義のために、刀を作り出すことを契約の条件として、神様より、最高の刀を作り出すことを認められたのだ。お前は、ただ、俺の真似をしたに過ぎない。その刀はニセモノだ」と、若い刀鍛冶は言った。

「もし、お前が秘伝を知りたいのであれば、俺の弟子となり、俺の下で、修行を積んだのであれば、いつの日か、本当に、最高の刀を作り出せたかもしれない。とても残念なことだ」と、若い刀鍛冶は続けた。

平凡な刀鍛冶は、うな垂れ、そして、大きな声で泣いた。「私は、お前の才能を妬んだ。そして、お前のような天性の才能を持つ刀鍛冶と同時代に、私を存在させた神を恨んだ。だから、私は、お前の全てを奪おうと思った。そして、お前に私を妬ませ、私と同じ気持ちを味わらせてやろうとした」

若い刀鍛冶は、「嫉妬で、人間は成長しない。なぜ、自分を正直に見つめ、そして、成長するための努力をしようとしなかった。神様は、確かに、お前に、才能は与えなかったかもしれない。しかし、神様は、努力する者を見捨てることはしない」

平凡な刀鍛冶は、「この女性を、私の物としたのも、全て、お前に挫折なり、屈辱を与えたかったからだ。お前に勝つことができるのは、唯一、この女性の愛を手に入れることができたということだけだ。そして、お前が愛した女性を利用して、お前に、最も残酷な仕打ちをしたんだ」と言った。

平凡な刀鍛冶の妻は、全ての真実を知り、驚愕した。そして、泣いたのであった。

若い刀鍛冶は、「俺は、今でも、お前に負けたと思ったことは一度もない。残念ながら、お前に屈辱を感じたこともないし、挫折を感じたこともない。全ては、お前の自己満足に過ぎないということだよ。いま、俺の使命は、この剣を完成させなければいけないということだ。私は、私の責任において、神様との契約に違反するという過ちを犯した。だから、私の才能が取り上げられても仕方がない。しかし、俺にとって、最高の刀剣を作るということをやめることは、死、そのものなのさ。だからこそ、悪魔と契約してでも、再び、最高の刀剣を作らなければならなかった。そして、その最高の刀剣の完成の日が近づいている」と言って、自らの首に剣の刃を当てて、静かに下に引いたのであった。そして、若い刀鍛冶は、「神よ、悪魔よ、見よ、いまこそが、最高の剣の誕生のときだ」と叫んだ言って、剣を天にかざしたのであった。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(7)

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その夜、村人たちは、結束して、平凡な刀鍛冶の屋敷に押し掛けたのだった。そして、年貢の減免と、財産の一部譲渡を迫った。しかし、平凡な刀鍛冶は、村人の話を聞こうともせず、使用人に村人の一人を斬らせ、重傷を負わせたのであった。平凡な刀鍛冶の妻となった女性は、その模様をあざ笑うかのように見て、高らかに笑っていた。村人たちの我慢は、すでに抑制することはできない状態まで高まり、深夜に武装蜂起をし、平凡な刀鍛冶の屋敷を襲撃したのであった。

悪魔は、若い刀鍛冶に、平凡な刀鍛冶の屋敷への襲撃が始まったことを伝えた。すると、若い刀鍛冶は、剣を手にして、「今こそが、この剣を完成させ、宿命を果たすときだ」と言った。悪魔は、「早くしなければ、平凡な刀鍛冶は村人たちに惨殺されるだろう。それをただ見届けるという選択もある」と言うと、若い刀鍛冶は、「この剣作りの総仕上げを、他者の手に委ねたくはない。自らの手で、最高の剣を作り上げたい」と言って、剣を手に、家を飛び出したのであった。

平凡な刀鍛冶の屋敷は、門を堅く閉ざし、警察官と使用人が警護にあたっていた。平凡な刀鍛冶は、警察に助けを求めたが、村人たちの蜂起を鎮圧するためには、その地方の主要都市からの応援を必要としていたため、その応援が到着するまで、屋敷に籠るしかなかった。

若い刀鍛冶は、悪魔の導きにより、屋敷の裏手より、忍び込み、平凡な刀鍛冶の立てこもる書斎に入ったのであった。

平凡な刀鍛冶は、若い刀鍛冶を見ると、「お前は誰だ」と言った。若い刀鍛冶は、鼻で笑うと、「俺の顔を覚えていないのか」と言った。すると、横にいた平凡な刀鍛冶の妻となった女性が、若い刀鍛冶であることに気づき、助けを乞うたのであった。

やがて、平凡な刀鍛冶は、若い刀鍛冶のことを思い出し、妻となった女性に、若い刀鍛冶から盗み出させた神様の秘伝によって作った最初の刀を取り出した。

「いまさら、秘伝は返せぬぞ」と、平凡な刀鍛冶は言った。

「秘伝のことは、どうでもいい。いま、俺は、この剣を完成させることこそが重要なのだ」と、若い刀鍛冶は言った。

「この刀は、神より与えられた秘伝によって作られた刀だ。そんな剣に負けるものか」と言って、平凡な刀鍛冶は、振りかぶり、若い刀鍛冶に斬りかかった。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(6)

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若い刀鍛冶は、3日3晩、夜を徹して、刀を打ち続けた。悪魔に授けられた秘伝により、再び、若い刀鍛冶の天性の才能は開花されたのであった。そして、4日目の朝、その剣は出来上がった。若い刀鍛冶が、その剣を持ち上げて、眺めていると、朝日の日光が房の中に入り込み、その剣を照らした。悪魔は、若い刀鍛冶の後ろから、「それは、まだ完成はしていない」と言った。若い刀鍛冶は、頷いた。悪魔は、「その剣は、完成のための犠牲を求めている。血を吸えば吸うほど、その剣は成長する。お前自身が、そのお前の相棒を、育てるのだ」と言った。

「この剣は、正義のためでもなく、平和のために存在するのではない。悲しい宿命の剣だ」と、若い刀鍛冶は言った。

「その剣が、最終的に完成するために必要なことは、わかっているな」と、悪魔は、囁いた。若い刀鍛冶は、頷いて、「もちろんだ」と言った。

「そのためには、まずは、その剣を成長させることが重要だ。私は、その剣の成長に必要な血を準備する。お前は、そのたびに、その剣を打ち続けるのだ」と言った。

平凡な刀鍛冶は、若い刀鍛冶から、女性を使って盗み出した秘伝を使って、良い刀を、次々と作りだし、売って、大きな財産を築いた。数年後には、平凡な刀鍛冶は、その財産で、庄屋から土地を譲り受け、その村の実質的な支配者となったのであった。女性は、その平凡な刀鍛冶の妻となり、不自由なく暮らし、欲するものの全てを手に入れることができた。しかし、村人のことを大切にはせずに、村人たちから多くの恨みを持たれるようになった。

また、この数年間、この村の治安の状態は、すこぶる良好であった。治安を乱した人々は、次々と、その村から姿を消していたのであった。その理由は、村人たちにはわからなかった。

その年は、天候悪化の影響で、飢饉となった。村人たちは、食べる物もなく、空腹に苦しんだのであった。村人の中には、子供を都市に送ったりする村人もいた。その中でも、平凡な刀鍛冶とその妻の女性は、贅沢な暮しを変えなかった。そして、その財産を村人たちに提供するということもなかった。

そして、この日は、夜から冷え込み、雪が降りだしていた。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(5)

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「物語は、それで終わりじゃないのよね。それで、終わりなら、伝説にはならないわよね」

「暫くののち、全てを失った若い刀鍛冶は、村の市場で、刀を売る男女を見かけた。若い刀鍛冶が近づくと、その男女は、平凡な刀鍛冶の男性と、若い刀鍛冶から秘伝を奪った女性だった。彼らが売っている刀は、若い刀鍛冶が持っていた秘伝の通りに作られた刀だった。それは、他の人々にはわからなくても、その若い刀鍛冶には、刀を見るだけでわかった。なぜならば、その刀は特徴的で、その刀を作っている者にしかわからない工作が仕掛けられていたから」

「今で言う、知的財産権のようなものかしら」

「そのとき、若い刀鍛冶は、全てを理解した。その女性は、平凡な刀鍛冶のために、自分と寝て、そして、自分の秘伝を奪っていったのだと」

「それは、冷静に考えれば、ある段階で気が付かなければね」

「若い刀鍛冶は、泣いた。全てを失ったことは悔やんでいなかったが、その女性が、平凡な刀鍛冶のために、自分から秘伝を奪ったという事実を悲しんだ。最初から、愛は、そこに存在していなかったという事実を嘆いたのであった」

「自らの過ちが、どこにあったのか、ということを、その若い刀鍛冶は、ようやく悟ることができたのね」

「人間の弱さは、何を生みだすと思う?」と、僕は、砂羽に訊ねた。

砂羽は、少し考えて、「甘え?それとも嫉妬心?」と答えた。

僕は、「それもあるかもしれない。しかし、人間が自らの弱さから生み出す、最も恐ろしいものは、悪魔なんだ」と言った。

砂羽は、「悪魔」とつぶやいた。

「若い刀鍛冶の前に現れたのは、悪魔だった。悪魔は、とても紳士的で、恐怖心を、若い刀鍛冶に与えないように、親切に、刀鍛冶の肩を、トン、と叩いた。そして、こう言った。「こんどは、私が、あなたに秘伝を授ける。私と契約をすることで、あなたは、もういちど、最高の剣を作り出すことができる」と」

「その若い刀鍛冶は、なんと言ったの?」

「若い刀鍛冶は、「その契約の代償はなんだ?」と訊ねた。そうすると、悪魔は、「もちろん、血だ。汚れた血を、あなたの相棒となる、その最高の剣は欲している」と答えた。若い刀鍛冶は、「平凡な刀鍛冶の作った神様の秘伝の刀と私が作るあなたの秘伝の剣、どちらが最高の刀剣となる?」と訊ねると、悪魔は、「もちろん、あなたの剣だ。なぜならば、あなたには、天性の才能がある。その分だけ、あなたの刀剣が勝つに決まっている」と言った。若い刀鍛冶は、「もう一度、最高の刀剣を作り出そう。その相棒の望みを叶えることにしよう」と、悪魔に言った。そして、いよいよ風花の伝説の日がやってくる」

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(4)

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「その夜から、その女性は、若い刀鍛冶の男性と寝なくなった。それまで、毎晩、若い刀鍛冶は、その女性を抱いていた。だから、若い刀鍛冶にとって、その女性を抱くことができない、ということは、拷問に近いほど、堪えることができない日々であった」

「性欲と刀鍛冶の秘伝、彼は、刀鍛冶の秘伝を、性欲を犠牲にしてでも守ろうとしたのね」

「それも長くは続かなかった。若い刀鍛冶は、性欲を抑制することはできなかった。その刀鍛冶は、その女性と寝なくなって、ちょうど、1か月目の日に、とうとう、その女性に、刀鍛冶の秘伝を教えることと引き換えに、その女性を抱いたんだ」

「とうとう、性欲に負けてしまったのね」

「僕はね、それは、性欲だけの問題ではないと思うんだ。若い刀鍛冶は、人間として、その女性を愛していた。だからこそ、その女性を失うことを恐れたんだ。彼は、その女性を失うことは、自分の全ての終わりであるように思いこんだんだろう。恋は盲目だって、言うだろう。人間は、恋をしているときに、冷静な判断なんて、なかなかできるもんじゃない。狂ったように、相手を想い、そして、さまざまなものを失う」

「その若い刀鍛冶は、最も大切としていた、刀鍛冶の秘伝を失うことになってしまうのね」

「その女性を抱いた後、若い刀鍛冶は、その女性に、刀鍛冶の秘伝を教えた。それは、最高の切れ味を持つ刀の作り方であった。若い刀鍛冶は、これは神様と契約をして、授けられた秘伝であると言った。神様からは、絶対に他人には教えてはならない、と言われ、それを誓ったと言った。翌朝、その若い刀鍛冶が目覚めると、横には、その女性はいなかった」

「神様が怒ったんじゃない?」

「もちろん、その通りだよ。その若い刀鍛冶は、狂ったように、恋に盲目になっていたとは言え、神様との約束を破ってしまったんだ。神様は、怒って、その若い刀鍛冶から、最高の刀を作るための才能を奪ってしまった。才能を奪われた若い刀鍛冶は、刀を作ることすらできず、全ての仕事を失った」

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(3)

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「こんど、4月から新しく入る人、昔、うちの会社にいた人なのよ。結婚して、一度、退社されたようなんだけど、こんど、戻ってくることになったみたい」

「そうだ。僕の次の研究について聞いてもらえるかな」と、僕が訊ねると、砂羽は、「いいわよ」と言った。

「ある地方に伝わる言い伝えなんだけどね。昔、ある村に、若い刀鍛冶の男性がいた。この男性は、特殊な技能があって、最高の切れ味の刀を作り出す秘伝を知っていたそうなんだ。その男性は、ある女性を好きになった。その女性は、とても美しく、器量が良く、村の男性全員からの憧れだったそうだ。もうひとり、村の中で、その女性のことが好きだった男性がいた。この男も刀鍛冶だったのだけど、平凡な刀鍛冶だった。そして、その女性は、この平凡な刀鍛冶の男性の恋人になったんだ」

「それで?」と、砂羽は訊ねた。

「ある日、この物語の主人公の男性が歩いていると、その女性が川の近くで泣いていたんだそうだ。男性は、女性に、「どうしたんだい?」、と声をかけた。すると、女性は、「なんでもないの」と答えた。しかし、どう見たって、なんでもないわけがない様子だった。今にも、川に飛び込んでしまいそうな感じだった。男性は、「とりあえず、君の家に送って行くよ」と言った。女性は、首を縦に、小さく振った」

「きっと、その女性は、恋人と何かあったのね」と、砂羽は言った。

「女性の家に到着すると、その女性は、男性に抱きついた。男性は、慌てながらも、その女性のことが好きだったから、男性も女性に抱き締めた。何の理由も訊ねずに、ただ、女性を強く抱き締めた」

「その男性と女性は、寝たっていうことね」

「そうだね。次の日から、その女性は、この男性の手伝いを始めたんだ。刀鍛冶のね。しかし、この男性は、最後の秘伝の部分は、誰にも見せなかった。その女性にもだ。ある日、その女性は、男性に秘伝を教えてほしいと言った。しかし、男性は、「それはできない」と断った。そうすると、その女性は、その男性と別れると言い出したんだ」

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(2)

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「今日は、どうしたの?」と僕が訊ねると、砂羽は、「4月から編集部の体制が変わるらしいのよ。だから、私、あなたの担当を外れるかもしれないわ」と言った。僕は、少し残念な気持ちになって、「それは残念だ」と言った。
「それに合わせて、雑誌のリニューアルもあるらしいのよ。そうしたら、もしかしたら、あなたのコラムも終わるかもしれない」と、少し申し訳なさそうに言った。
僕は、「それは仕方がないね」と言った。

「今日は、それを伝えに来たのよ。私も、このお話を一人で抱えるのが重かったから、誰かに話したかっただけ。別に、あなたを悲しませるために来たわけじゃないのよ。あなたなら、信頼できるから」と言った。

「君は、どうなるの?」と、僕が訊ねると、砂羽は、「わからないわ。もしかすると、本社に戻ったり、別な子会社に異動したりすることになるかもしれないし」と言った。

「そうか。確かに、君の会社、最近、M&Aで、人材派遣会社を買って、人材派遣業界に打って出ようとしていたり、かなり攻めの経営をしているからね。君を将来の幹部候補だと考えているのなら、いろいろな経験をさせるために、ひとつの部局に置いておかないかもしれない」

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.3:風花(1)

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絵里の様子が変であった理由は、僕にはわからなかった。もちろん、ある程度の想像はすることができたが、それを訊ねたり、確認をしたりするということは、絵里のプライベートに踏み込むことになるし、僕には、その権利もないし、そして、僕自身、それを知りたいとは思わなかった。絵里が、自ら、何かを語りだそうとすれば、それを聞いてあげようと思ったが、僕の方から、何かを語らせようともしなかった。

もっと言えば、絵里に、語らせることは、僕にとっては、何の意味もないことであった。僕と絵里の関係とは、最初から、そういう関係なのであり、今後も、それは変わることはないだろう。

それでは、僕と絵里の間にある感情が友情であるのか、というと、それも違うだろう。そもそも、友情とは何なのだろうか。きっと、僕と絵里は、友情でも恋愛でもない、全く異なった関係なのだろう。そして、その関係が、いつまで続いて行くのか、それは、少なくとも、僕と絵里は知らないでいる。

僕は、自分のオフィスで、パソコンに向かっていた。文章が、なかなか思いつかず、流れてくるジャズのミュージックを楽しんでいた。そこに、砂羽がやってきた。僕の原稿を受け取りに来たのだと思った。

僕は、「まだ、原稿は書き上がっていないよ」と言った。

「それは、わかっているわよ。あなたは、いつも締切の前に原稿を上げたことはないんだから。きっと、まだ1行も出来上がっていないんでしょう?」と言った。

「よくわかっているね」と、僕は笑いながら言った。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(7)

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「ねえ、寒くないの?」と訊ねると、「冷たい風が、なぜか、心地良いのよ」と、絵里は答えた。「ねえ、絵里ちゃん。僕が、こういうことを訊ねるのは、たぶん、踏み込み過ぎなんだろうと思うし、聞くべきではないと思うのだけど、何かあったのかな?もちろん、答えたくなければ答えなくてもいいのだけど」と、僕が言うと、絵里は、「そう、君は、その質問を、私に、聞くべきではないわ」とだけ答えた。僕は、「それなら、それで構わない」と答えた。

僕は、車を江ノ島の方まで走らせた。葉山で食事をする予定であったが、絵里の様子を見ていると、そのまま車を走らせた方が良いのだろうと思った。絵里も、ただ黙って、窓から入る込む冷たい風を静かに感じていた。

僕たちは、江ノ島の近くにある国道沿いのレストランで、車を停めて、食事をした。食事を済ませ、車に乗ろうとすると、何か小さな白いものが、ひらひらと、僕たちの上に舞った。

「僕は、雪だ」と言うと、絵里は、「そうね」と言って、寂しそうな顔をした。

そのとき、僕の携帯電話のバイブレーションが震えた。携帯を取り出すと、ほのかからのメールが届いたのであった。メールには、「おやすみ」と書いてあった。僕は、そのメールへの返信として、「こちらでは、雪が降ってきた。今夜は、とても寒い夜になりそうだ。こんな日には、君に心から逢いたいと思う」と書いた。明日の朝には、東京にも、もしかすると、風花が舞っているかもしれない。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(6)

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東京に戻って、1週間が経つころ、僕が自分の部屋に戻ると、部屋には絵里が来ていた。僕は、「絵里さん」と言うと、絵里は、「帰ってくるの、遅かったじゃない」と言った。時計は、まだ18時を回ったばかりだった。僕は、「絵里さんが早いんじゃないの?」と言うと、絵里は、「何か言った?」と、少し不機嫌な声で答えた。

「ねえ、荘ちゃん、今日は、何か食べに行きましょうよ。ご馳走してあげるから」と、絵里は言った。僕は、「それは嬉しいね」と言うと、「その代わり、運転してね」と絵里は言った。

僕は、絵里を乗せて、湾岸沿いに高速道路を走った。絵里は、レインボーブリッジとベイブリッジを渡りたいと言って、僕は、まずレインボーブリッジを渡り、そのまま羽田の方向に車を走らせ、横浜に向かった。ベイブリッジを渡ると、絵里は、「葉山においしいレストランがあるのよ」と言ったので、そのまま横浜横須賀道路に入り、横横道路の終点で国道を右に曲がり、葉山に向かった。

車の中で、絵里は、「ねえ、ほのかちゃんに逢えたの?」と訊ねた。僕は、「逢えたよ」と答えた。

「ほのかちゃん、どうだった?」と、絵里は言った。僕は、「どうって、どういうこと?」と訊ねると、「気持ちの変化よ」と言った。

「再び、ほのかちゃんに逢って、君の気持ちは、どのように変化したのよ。もっと好きになった?、それとも、少し気持ちは冷めた?」と訊ねた。

僕は、「もっと好きになった」と答えた。絵里は、「ふーん」と言って、車の窓を少し開け、潮風を車の中に入れた。
「じゃあ、砂羽ちゃんより、ほのかちゃんを選ぶ、ということ?」と、絵里が言うと、僕は、「それは、まだ、わからない」と言った。そして、「もしかすると、絵里さんを選ぶかもしれない」と言うと、絵里は、笑って、「それはやめておいた方がいいわね」と言って、再び、顔を潮風に当てた。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(5)

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そのうち、僕は絢音に恋をするようになった。そして、僕は、キャンパスの近くのいつもの喫茶店で、僕は絢音に自分の気持ちを伝えたのであった。絢音は、少し困ったような顔をした。

「私は、あなたのこと、恋愛対象として見たことがなかったのよ。だから、突然、そんな風に言われても、困ってしまうわ」と、絢音は言った。

僕は、「確かに、そうだね。変なことを言ってごめん」と言った。

すると、絢音は、溜息をついて、「別に謝る必要はないわよ」と言った。

そして、「私は、あなたのこと、もちろん、嫌いではないのよ。こうして議論をすることは楽しいし、勉強になる。でも、あなたを恋愛の対象にするということは、申し訳ないけど、私の中には、そういう気持ちはないのよ」と絢音は言った。

「はっきり言ってくれて助かるよ。たぶん、それが優しさなんだと思う」

「失恋って、傷つくけど、人間は立ち直れるし、成長することができる。あなたには幸せになってもらいたいから、はっきりと言うけれど、私は、あなたと付き合うことはできない」

その後、僕と絢音は、連絡を取り合わなくなり、キャンパス近くの喫茶店で、議論をすることはなかった。絢音は、大学院を修了し、外国の美術館のキュレーターとなった。僕は、そのまま大学院に残った。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(4)

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「まだ、京都にいるの?」と訊ねると、「昨日のうちに仕事は終わって、今日帰るのよ」と砂羽は答えた。僕は、「急いで帰らないといけないの?」と訊ねると、砂羽は、「そうね。午前中の新幹線で戻るわ」と答えた。僕は、「僕は、このまま、北陸に向かう予定なんだ。今回は、すまないことをしたね」と言うと、砂羽は、「特に、気にしていないわ」と答えた。

僕は、電話を切ると、そのままみどりの窓口に向かい、そして、切符を購入した。僕は、このまま北陸地方を回って、東京に戻ることにした。北陸に用事があるわけではなかったが、このまま、のぞみに乗って、呆気なく東京に戻るのは残念に思えた。ほのかのことを、少しずつ思い出しながら、電車に揺られたいと思ったのである。

車窓からは、琵琶湖の風景が見えた。ほのかが住んでいる京都は、遠ざかってしまった。僕は、離れ行く景色を見ながら、もう一度、ほのかに会いに、京都に戻りたいと強く思った。しかし、電車は無情にも、京都から、離れて行った。

ほのかのことを考えていると、ふと、絢音のことを思い出した。絢音は同じ大学院に通っていた。そして、そのころ、僕が愛した女性であった。昨晩、ほのかを見つめながら、ほのかは、絢音にもどことなく似ていることを再認識した。砂羽にも、もちろん似ているのだが、絢音だと言えば、絢音かもしれない、つまり、砂羽と絢音の両方の特徴を、ほのかは持っているのであった。

絢音は、美術館のキュレーターを目指し、大学院で美術を専攻していた。僕は、大学院に入った頃から、現代民俗学に興味を持って、歴史や伝統品を調べていた。僕たちが初めて出会ったのは、古代美術に関する講義の教室であった。

僕と絢音は、一緒の講義に出席し、そして議論をした。時には、ぶつかり、時には、同意した。講義の後も、ふたりでの課外講義は続いた。博物館に行ったり、美術館に行ったり、そして、キャンパスの近くにある喫茶店に入り、議論を続けたのであった。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(3)

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今、ほのかと逢おうと思えば、往復の交通費と宿泊代で6万円はかかってしまう。毎週、ほのかに会おうと思えば、24万円になってしまう。もちろん、無理をすればなんとかなる金額ではあるが、なかなか難しい金額である。しかし、ほのかが東京に住むとなれば、そのお金は必要なくなる。その分、ほのかにプレゼントをしたり、食事をご馳走してあげることができる。

食事をした後、僕はほのかと部屋に戻り、もう一度、抱き合った。そして、何度もお互いの存在を確認し合ったのであった。

翌朝、僕は、ほのかに、「君が東京に来るまでに、何度か来たいと思うのだけど、いいかな」と訊ねた。すると、「もちろんよ」と答えた。そして、ほのかは何かを思い出したような顔をした。

僕が「どうしたの?」と訊ねると、「そういえば、裕子さんも春から東京に行くって言っていたわ」と言った。僕は、「彼女が東京に?ご主人の転勤か何かなの?」と言うと、ほのかは、「いや、裕子さん、いよいよ離婚することを決めたらしいのよ。ほら、裕子さんのところ、お子さんもいないし、ずっとご主人とうまくいっていなかったようだから、だから、ご主人と別れて、東京で働くことにしたそうなのよ」と言った。

「確かに、彼女の実家は埼玉のはずだから、ご主人と別れるのであれば、こちらにいる理由もないしね」

「確か、結婚情報誌の編集部で働くようなことを言っていたわ」

「僕が連載をしている結婚情報誌じゃなければいいけどな」と、僕は冗談めかしていうと、「そうだったら、面白いわね」とほのかは笑った。

僕は、ほのかを見送った後、携帯電話を取り出し、砂羽にコールバックした。もう遅いかもしれないが、このまま携帯の着信を無視してよいということはない。何度か、呼び出し音が鳴ると、砂羽が電話に出たのであった。

「吉本ですが、昨日、何度か電話をいただいたみたいなのですが」と、僕は、とぼけた感じで、話を切り出すと、砂羽は、「メールもしたけど、昨日、出張で京都に来たのよ。それで、以前に、祇園に案内してくださるっていうから電話をしたのだけど」と砂羽は答えた。僕は、「ごめん、メールは読んでいなかった」と嘘をついた。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(2)

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携帯電話を見ると、何回かの着信履歴が残っていた。いずれも砂羽の電話番号であった。今頃、砂羽は怒っているのだろうか。砂羽は、京都のどこにいて、そして、何をしているのだろうか。もし、このまま、ほのかと食事をしに行って、そこで砂羽と偶然出会ったりしてしまったら、たぶん、僕と砂羽の関係は確実に崩壊するだろう。

ほのかは、「そろそろお腹が減ったわね」と言った。僕は、「そうだね」と答えた。そして、「そうだ。このホテルの上にあるレストランで京都の夜景を見ながら食べないか」と訊ねた。すると、ほのかは、「それは良いアイディアね」と言った。

ほのかと僕は、最上階のスカイラウンジに行き、京都の夜景を見ながら、シャンパンを開けた。僕は全ての嫌なことを忘れて、ほのかとの時間を楽しんだのである。

「ねえ、荘ちゃん。私、もしかすると、東京の勤務になるかもしれへんわ」

「えっ。そうなったら、どんなに素晴らしいことだろう」

「まだ、わからへんけど、うちの銀行、初めての配属は、関東出身の人は関西の支店で、関西出身の人は関東の支店になるみたいなんや。たぶん、4月に会社に入って、まずは新入社員研修とかあって、その後、夏ぐらいには配属になると思うんやけど、たぶん、東京の支店になると思う」と、ほのかは言った。

「それは、素晴らしい」と、僕は言った。

「研修も東京になるみたいなんや。もちろん、寮みたいなところに入ると思うから、あれやけど、休みの日とかは自由に外出できるみたい」

「それは、最高だ」と、僕は言った。

ほのかが4月から東京に配属される。なんて、素晴らしいことなのだろう。僕は、その話を聞いただけで、とても高揚した。もし、ほのかが東京に住むようになれば、今とは比較にならないぐらい、ほのかと逢うことができる。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.2:潮風の詩(1)

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砂羽は、京都駅に到着すると、何度も荘太郎の携帯に電話をした。しかし、荘太郎は電話に出なかった。砂羽は、「もう」と言って、そのままエスカレーターを降り、タクシー乗り場に向かった。
砂羽の頭上にあるホテルの部屋では、僕とほのかは抱き合っていた。優しく、時には強く、お互いの存在を確認するように抱き合っていたのであった。

このまま、時が止まってほしいと、僕は心から願った。ほのかと一緒にいる、この時間が永遠に続くことを祈ったのであった。

ほのかは、「ねえ、あなたのこと、なんて呼べばいい?」と訊ねた。僕が少し不思議そうにしていると、「だって、あなたとか、そういうのって、なんか変じゃない?」と言った。
僕は、「うーん、なんでもいいのだけど」と言うと、「たとえば、今まで付き合ってきた人には、なんと呼ばれたの?」とほのかは訊ねた。

「荘ちゃん、荘くんとか、荘太郎くん、とかかな。あとは、君、って言われることもある」

確かに、絵里は、ふだん、僕のことを「君」と呼ぶ。一度、絵里に、「君」というのはやめてほしいと言ったら、「それが私にとっては、けっこう愛情のある呼び方なのよ」と言った。そして、たまに、「荘ちゃん」とも呼ぶ。

あるとき、絵里が、「ねえ、昔、付き合っていた彼女になんて呼ばれていたの?」と尋ねられたので、「荘くん、とか、荘太郎くんとかかな」と言ったら、絵里は、「そうなの。じゃあ、私は絶対に、そういう風には呼ばないわ」と言った。僕は、「なんでなの?」と訊ねると、「過去に付き合っていた女の人と同じ呼び方をしたくないだけよ」と答えた。僕には、絵里の気持ちがわかるようで、わからないという感じであったが、絵里がそうしたければ、そうすればいい、と思った。

「じゃあ、荘ちゃんって呼んでいい?」とほのかは言った。僕は、「もちろん、それでいい」と答えた。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(7)

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ティラミスが出来上がり、僕と絵里は、ティラミスを、早速、食べることにした。僕は、「もう、こんな時間だけど、今日は泊って行くの?」と訊ねると、絵里は、「もともと、そのつもりよ」と答えた。「ふーん、そうなんだ」と僕は言った。このように、絵里は、いつも気ままに来て、気ままに泊って行くのであった。僕は、絵里のことを、特に呼び出そうとしたことはなかった。絵里が来たい時に来て、泊まりたい時に泊まっていく。カジュアルな関係以上でも以下でもない関係でしかなかった。

翌月、僕は、再び、京都に出掛けた。ほのかに電話をすると、「来週の週末は空いているわ」と言った。僕は、早速、グランヴィア京都に電話をして、部屋の予約をした。グランヴィアのチェックインは15時からだから、昼過ぎの新幹線に乗れば十分である。僕は、週末の土曜日、昼過ぎの新幹線に乗り、京都に向かい、そのままチェックインした。そして、チェックインしたことを、ほのかにメールで伝え、僕は、シャワーを浴びた。ほのかには、僕が到着するおおまかな時刻をあらかじめ伝えてあった。もう、すぐ近くに来ているはずだ。

シャワーを浴びながら、僕は、心の高揚を抑えきれずにいた。僕は、困ったと思いながら、その高揚を必死に抑えようとしたのであった。

シャワーから上がると、携帯電話にメールが着信していた。ほのかから、早速、返信だと思って、喜んで、携帯電話をチェックすると、メールは、砂羽からであった。

「先生は、今週末は京都にご出張とお聞きしました。実は、私も京都に急に出張することになり、今、新幹線に乗っています。以前におっしゃられていた祇園の件、今夜いかがですか?」

僕は、非常に焦った。何も後ろめたいことはないはずなのに、この感情はなんなのだろうか。もし、ほのか、という存在が、僕の目の前に現われていなかったら、僕は、砂羽を祇園に案内することに大喜びしていたはずである。もちろん、いまも、それは変わりないし、断るということに、大きな後悔を感じるであろうことも予測できる。しかし、いまは、ほのか、か、砂羽か、という選択をしなければならない、という、僕にとっては、非常に難しい問題に追い込まれたのであった。

そのとき、ドアのノック音がした。僕は、外を確認すると、そこには、ほのかが立っていた。僕は、静かに、ドアを開けると、ほのかは、僕に抱きつき、「ずっと、逢いたかったわ」と、京都弁のイントネーションで語ったのであった。似たような顔で、似たような体系であって、たぶん、何も話さなければ、どちらが、杉崎砂羽で、佐藤穂香なのか、誰も見分けはつかないだろう。それだけ、一卵性双生児のように同じなのである。違うとすれば、杉崎砂羽は、標準語のイントネーションに慣れていて、佐藤穂香は、まるっきり京都弁のイントンーションだ、ということだ。
いま、僕の部屋に来て、僕に抱きついたのは、間違いなく、佐藤穂香の方であった。そして、杉崎砂羽は、現在進行形で京都に向かってきている。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(6)

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「それが恋というものなのよ。でも、君のために言っておくと、少なからず、想像をするのはやめることね。恋愛において、想像は、妄想を生むことがおうおうにしてあるから、君一人で苦しんで、それで、君が暴走して嫌われるのがオチよ。今まで、そのパターンが多いじゃない。私の知っている限りでも、ひとつ、ふたつ・・・」

「僕も、余計なことを考えないようにしているんだけどね。どうしても不安になって、そして、あれこれ、想像してしまうんだ。それがいつのまにか、僕の中で真実になって、負のスパイラルに陥る」

「それで、君は、いつも精神的に不安定になるんじゃない。失恋の度に、セラピーに通ったりして、本当に、弱い人間よね。もっと、強い人間になりなさい」

「ねえ、絵里さんは、なんで、そんな強くいられるの?」

「別に、私だって、強くないわよ。でも、すべては私の責任と思っているだけなのよ。最後、自分に責任を取って上げられるのは、自分しかいないんだから、それを信じることよ。恋愛とは、信じる、信じない、ということではないのよ。恋愛の中には、嘘もあれば、隠しごともある。それを全部合わせて、恋愛なのよ。恋愛の中で、重要なのは、自分を見失わないことよ。何があっても、自分を見失ってはだめ。自分さえ、しっかりしていれば、簡単には、心は砕けないから大丈夫よ。」

「僕は、砂羽のことを好きだと思った。最初に会ったときから、ずっと。そのときは、何気なく一言二言しか話したことがなかったけど、すぐに、僕は砂羽のことを好きだと思った。よく、僕は、惚れやすいと言われるけど、それは違う。いろいろな経験を通じて、感情が移入してしまうようなことはあるけれど、それは恋愛とは違う。それに、僕自身も最近、理解することができたんだ。同じ好きだという感情でも、感情の移入と恋愛は違う。LikeとLoveがあるように、好きという言葉も多元性があるんだ。Loveの方は、ファーストインプレッションに依るところが大きい。最初に会ったとき、予感ではないけど、なんとなく、僕はこの人を好きになるんだろうな、という電気信号を直感的に感じるんだ」

「今まで、そうだったの」と絵里が訊ねると、

僕は、「うん」と答えた。

すると、「ねえ、私と最初に逢ったときは、どのように感じたのよ」と意地悪そうに訊ねた。僕は、「わからない」と答えた。「感じたような気もしたし、感じなかった気もする」

「だから、今でも、こんな関係なのかもしれないわね」と絵里は言った。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(5)

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あの晩、僕は、ほのかと、寝なかった。ほのかも、それを望まなかったし、僕も、なぜだか、それについて積極的にはならなかった。ルームサービスで、シャンパンを注文し、夜景を見ながら、乾杯をした。ただ、それだけであった。

ほのかは、僕の隣に座り、「また、逢いたいわ」と言った。僕は、「僕も同じ気持ちだよ」と答えると、「でも、東京と京都は離れ過ぎているわ」と言った。「僕は、距離は関係ないよ。たしかに、頻繁に来ることは難しいかもしれないけど、いま、僕は、月に一度は、ここに来て、ほのかに逢いたいと思っているんだよ」と答えた。すると、ほのかは、「嬉しい」と言って、喜んだ。僕は、もう一度、ほのかの顔を眺めた。すると、砂羽の面影だけではなく、数年前に、僕が好きだった絢音にも似ているのではないかと感じた。

僕は、自宅のあるマンションに戻ると、玄関の鍵が開いており、部屋の中に人の気配を感じた。「来ているのか」と玄関から声をかけると、絵里は、「あら、おかえり」と言った。絵里は、外資系のコンサルタント会社に勤めていた。僕とは、どこかの異業種交流会で知り合い、そして、いわゆる、カジュアルな関係となった。僕には、好きな人は他にいるし、絵里にも好きな人がいた。しかし、僕たちは、時には姉弟のように気が合い、一緒の時間を過ごした。姉弟と書いたのは意味があって、絵里は、僕よりも4つ年上の女性で、32歳の誕生日を迎えようとしていたからだ。

絵里は、キッチンで、何かの料理をしているようであった。「絵里、何を作っているの?」と訊ねると、「荘ちゃん、呼び付けにはするなって言わなかったっけ?」と包丁を片手に振り向いた。そして、その包丁を、僕の方に向けた。「ごめん、ごめん。絵里さん、もしくは、絵里ちゃんとお呼びするべきでした」と謝った。すると、絵里は、「まあ、今日のところは、許してあげるわ」と言い、料理に集中し始めた。

テーブルの上には、絵里の作った料理が並べられていた。菜の花のスパゲッティであった。そして、絵里は、「ねえ、荘ちゃん。ティラミスを作ってあげるから、買い物してきてよ。クリームがないのよ」と言った。「絵里ちゃん、ぼくは、温かいうちに、このスパゲッティを食べたいんだけど、それはいいのかな」と訊ねると、絵里は、「もちろんよ」と答えた。

スパゲッティを食べ終わった後、僕は、コンビニまでに行き、絵里に言われた通りのティラミスの材料を買ってきた。そして、絵里は、ティラミスを作り始め、僕は、クリームを混ぜるという仕事を与えられた。僕は、クリームを混ぜながら、京都での話を、絵里にした。

すると、「荘ちゃん、それは、そのほのかっていう娘に、完全に惚れているわね」と言った。
僕は、「でも、僕が好きなのは、砂羽の方なんだけどね」と答えた。「それなら、京都にほのかちゃんに逢いに行くのやめればいいじゃない。簡単なことよ」と言った。

「でも、僕は、とても、ほのかに逢いたいんだ。今、何をしているのだろうと思うと、とても寂しい気持ちになるし、もしかすると、男と一緒にいるんじゃないかと想像すると狂いそうになる」

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(4)

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僕は、ほのかの顔をじっくりと眺めた。ほのかは、二重で目がクリっとしていた。そして、顔全体は、ふっくらとしている感じであった。ほのかは、「あんまり、ジロジロと見られると恥ずかしいんだけど」と言った。僕は、「君が、とっても、かわいいから」と答えた。僕は、ほのかを眺めながら、全体の感覚として、これまで、僕が好きになってきた全ての女性の外形的な要素を合わせ持っているのではないかというような錯覚に陥った。「好き」になるというのは、やはり、どこかで共通性なり癖というものがあるのだろうか。ほのかを眺めながら、その共通性こそが、ほのか、そのものなのではないかと思ったのであった。

僕は、東京に戻ると、時間もごく普通の日常生活の時間に戻った。僕は、アルバイトで結婚情報誌にコラムを書いていた。コラムの内容は、僕が研究で歩いてきたときに感じたことをエッセイ風にまとめるということだ。僕は、結婚情報誌の編集部に、行くと、砂羽が待っていた。砂羽は、僕のひとつ年下の女性で、結婚情報誌の編集部で編集者をしていて、僕のコラムの担当であった。そして、僕が、好きな女性でもあった。

「ねえ、吉本先生。こんどのコラムは、どこのお話になるの?」と砂羽は訊ねた。

「杉崎さん、こんどはね、京都の話にしようと思っているんだ」と答えた。

「そういえば、先生、先日、京都に行って来たんでしたよね。何か、面白いことがあったんですか?」と砂羽が訊ねた。僕は、ふと、「偶然というか運命というか、自分の好きな人と同じ顔をしていて、同じ体型をしている女性に会うことがあるなんて信じられる?」と、つい言い出しそうになった。しかし、それを、特に、砂羽にだけは言ってはならないと思った。これと言った理由は、特に思い当たるわけではないが、とにかく、京都で、ほのかに出逢ったことは、絶対に、知られてはならないと思ったのであった。

僕は、とぼけたふりをして、「今回は、あまり新しいところには行かなかったから、祇園の風習の話でも書こうかなと思っているんだ」と答えた。

すると、砂羽は、「祇園ですか。いいわね。私も、一度、行ってみたいわ」と言った。

「それなら、一度、京都に出張する用事を作るといい。僕の馴染みの店を紹介するよ」と言った瞬間に、なんとなく違和感を覚えた。はっきりとしたことは、全く言えないが、違和感という言葉がぴったりであろう感覚を覚えたのであった。砂羽は、「それは楽しみにしているわ」と言った。僕は、「うん」と答えるだけであった。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(3)

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そして、裕子が戻ってくると、裕子は、「荘太郎くん、また京都に来るときは連絡しなさい」と言って、「ほのかちゃん、そろそろ行きましょう」とほのかに言った。裕子が伝票を覗き、裕子とほのかの分の代金を出そうとしたので、僕は、「コーヒー代金ぐらい、今日は、僕が出すからいいよ」と言った。すると、裕子は、「じゃあ、次の時は、私が出すわ」と言い、ほのかは、「ありがとうございます」と言った。僕は、レジに伝票を持って行き、部屋に料金を付けてもらい、そして、2人と別れたのであった。そして、僕は、そのまま、グランヴィア京都に予約してある部屋に戻ったのであった。

部屋に戻ると、すぐに携帯電話のバイブレーションが震えた。メールが届いたのであった。メールは、ほのかからのものであった。
「今日は、コーヒーをご馳走になり、ありがとうございました。私も、あなたに、また、お会いしたいです。次は、いつお会いできますか」、と書いてあった。僕は、少し、悪戯心を持って、「メールをありがとう。ほのかさんの気持ち、とても嬉しいです。私は、今夜は、グランディア京都の1010号室に宿泊しています。もし、良かったら、ルームサービスでシャンパンでも頼むので、遊びに来ませんか?」と返信をした。
たぶん、「ごめんなさい」というメールが戻ってくるだろう。僕は、それで構わないと思った。到底、夢のような話で、実現性のない話だ。「ごめんなさい」というメールが戻ってくれば、「もちろん。今のは冗談です。次に京都に来る時に連絡をします。その時に、ランチでも食べましょう」と返すつもりなのだ。

しかし、ほのかからは、一向にメールの返信が届かなかった。僕は、「しまった」と思った。少し悪戯が過ぎたと思った。僕は、少し寂しい気持ちになり、送信したメールの文章を何度も読み返し、後悔をした。

暫くの時間が過ぎて、僕はベッドの上に横になっていると、ドアをノックする音が聞こえた。僕は、ドアのミラーを覗くと、さきほど、2階のロビーで別れたばかりのほのかが立っていた。僕は、ドアを開けると、白いハーフコートを着たほのかは、素早く、僕の部屋に入り、「裕子さんを誤魔化すのに、時間がかかっちゃった」と言った。僕は、「来てくれたの」と言うと、ほのかは、「あなたが、来てほしいって言ったんやで」と答えた。僕は、「嬉しいよ」と言うと、ほのかは、優しく微笑み、僕の腕の中に包まれたのであった。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(2)

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「荘太郎くん、久し振りね」

「ああ、久し振りだね」

「何を驚いているのよ」

「いや」

というように、僕は、裕子の言葉を半ば聞き流すように、裕子の隣に座る女性を眺めていた。

「かわいいからって、そんなにジロジロ見ちゃだめよ」と裕子は言った。

僕は、「いや、そういうつもりはないのだけど」と答えると、その女性は、少し恥ずかしそうにした。

「この娘は、ほのかちゃん。私の家の近くに住んでいるのよ。前から、荘太郎くんに会いたがっていたから、連れて来たのよ」と、裕子は言った。

「ほのかさん。失礼だけど、どのような字を書くのですか?」と、僕は訊ねると、「稲穂の穂に、香る。それで、穂香と書いて、ほのかと読ませるんです」と、京都弁のイントネーションを混じりながら、話した。僕は、「それはいいお名前だ」と言うと、「恥ずかしい」と言った。

「ほのかちゃんは、今年、大学を卒業するのよ。まだ、若いんだから」と、裕子が言うと、僕は、「就職先は決まっているんですか?」と、ほのかに訊ねた。すると、「まだ、どこに配属されるかはわからないのですけど、銀行に勤めることになっています」と答えた。

「それは、素晴らしいじゃないですか」と僕が言うと、裕子は、「ほのかちゃんは、お嬢様なのよ」と言った。

僕と、裕子と、ほのかは、そのコーヒーラウンジで、コーヒーを飲みながら、取りとめのない世間話をした。最近、裕子は旦那さんと、あまりうまく行っていないと言った。僕は、「優しい旦那さんじゃないか」と言うと、「外面はいいのよ」と裕子は答えた。

別れ際に、裕子は手洗いに向かい、席には、僕とほのかの2人になった。僕は、「ほのかさん、またお会いしたいのですが」というと、ほのかは、「えっ?」と言った。僕は、「僕は、あなたとのことをもっとよく知りたいと思ったんです。もっとお会いして、そして、お話をしたい。僕の連絡先をお渡しいたしますので、もし、会っていただけるのであれば、ご連絡をいただけないでしょうか」と、僕の名刺に、携帯電話番号とメールアドレスを記載して、ほのかに渡した。ほのかは、戸惑いながらも、僕の名刺を受取った。

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(1)

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グランヴィア京都。京都駅に直結するラグジュアリー感の高いホテルだ。京都駅の改札を出て、そのままエスカレーターに乗る。2階にロビーがあり、その横に改札を見下ろすように、コーヒーラウンジがある。
僕は、友人と、このロビーラウンジで待ち合わせをしていた。友人の名前は、裕子という名前の女性だ。彼女とは、大学の同級生であった。裕子は、大学卒業後、出版社に勤め、社内恋愛で結婚をし、夫の転勤に伴って、京都の近くに住んでいた。

今年のお正月に、裕子から来た年賀状に、「もし、京都のお近くに来ることがあれば、久し振りにお会いしたいわ」と書いており、僕は懐かしくなって、裕子に電話をした。そして、僕がフィールドワークというか取材のために、近々、京都に行くことを伝えると、コーヒーでも飲もうということになったのであった。

僕は、現代民俗学の勉強をしていた。特に、街そのものに興味を持っていた。街を歩くことで、その地域の伝統や文化を研究するのである。元々は、考古学を専攻していたが、いつのまにか、もう少し、人間や街という窓を通じて、文化の歴史を探究してみたいと思ったのである。いまは、研究をすること、女子大の非常勤講師として現代民俗学の講義をすること、そして、出版社から頼まれる原稿を書くことの3つが主な仕事であった。

「荘太郎くん、ここよ」と、裕子は、僕の姿を見つけると、大きく手を振った。僕は、裕子を確認し、そちらの方に向かって歩いて行くと、裕子の隣に、もうひとり女性が座っていた。僕は、その女性を見て、驚きを隠すことができなかった。なぜならば、僕が好きな女性と、ほとんど同じ顔をして、同じぐらいの身長で、同じような体系をしていたからだ。

僕は、その女性を不思議そうに確認しながら、裕子の前に座った。

登場人物・人物相関図

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【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] 登場人物紹介・相関図

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<登場人物>
吉本荘太郎(よしもと・そうたろう)
現代民俗学の研究者。女子大学で非常勤講師を務め、アルバイトで出版社からの依頼により、雑誌のコラムを執筆したり、アンカーマンの仕事をしている。

佐藤穂香(さとう・ほのか)
荘太郎が京都で運命的に出逢った女性。砂羽にそっくりで、絢音にも似ている。裕子の家の近くに住んでおり、春からは、銀行に就職が決まっている。

杉崎砂羽(すぎさき・さわ)
株式会社ラクルーノの結婚情報誌「マリッジ」の編集者。荘太郎が連載しているコラムの担当でもある。荘太郎は、砂羽のことが好きであり、砂羽は、なんとなく、それに気が付いている。荘太郎より、1歳年下。

津村絵里(つむら・えり)
荘太郎とは、カジュアルな関係の女性。荘太郎より、4歳年上。外資系のコンサルタント会社に勤務をしている。

滝川絢音(たきがわ・あやね)
荘太郎が、かつて好きだった女性。荘太郎とは、大学院の同期で、現在は、美術館のキュレーター。荘太郎のことを嫌っている。

雪室裕子(ゆきむろ・ゆうこ)
荘太郎の大学の同期。学卒業後、出版社に勤め、社内恋愛で結婚をし、夫の転勤に伴って、京都の近くに住んでいる。ほのかの家の近所に住んでいる。現在は、フリーの編集者として仕事をしている。

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