「ソーシャルネットワークとコミュニケーション手法の多様性」
【開催日時】4月6日(水)
【場所】中央大学多摩キャンパス11号館 11410教室
【パネリスト】(五十音順)
澁川修一氏(独立行政法人経済産業研究所研究スタッフ)
矢尾板俊平氏(中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程)
渡邊義弘氏(maromaro.com主催 東京大学大学院学際情報学府博士課程)
【司会進行】
銭谷 恭子(中央大学総合政策学部政策科学科4年)
■ソーシャルネットワーク背景とその定義(銭谷)
■問題提起(矢尾板)
●従来のソーシャル・キャピタル論(社会関係資本論)
・パットナムの定義
⇒(第一の問題提起):公共政策、民主主義とソーシャル・キャピタルとの関係とは?
●ネットワークとはどのようなものか?
・バラバシの議論(ハブ、リンク、一方通行、自己組織化)
・スモールワールド(「われわれが住むこの世界は、あらゆるものが他のあらゆるものにリンクされている」) など
●情報通信技術の発展に伴い、ネットワークも進展
・NPOやサークルなどのオフライン的なネットワークだけではなく、オンラインによるネットワーク形成も可能になった。
●政策形成にも「ネットワーク」が重要。
●(第二の問題提起)でも「ネットワーク」だけで良いの?
→コンテンツ(情報、知識)とその共有方法も重要(well informed public へ)
■澁川
・自分の仕事は、人と人とを出会わせることである。
・昔は、連絡を取るといえば固定電話が普通であった。現在は24時間いつでも連絡をとることができる状態になっている。
・ WEBの面白さは、有名な人と一般の人とが同じ土俵で勝負することができるというところ。個人的な情報発信が取り上げられる。たとえば、新聞記者の実名ブログが有効な議論を組み立てられておらず、それに対するコメント欄での指摘に答えられず、結局閉鎖に追い込まれるという事件が最近続発しているが、こういったことを考えれば、オンラインもオフラインも、丁寧かつ誠実な議論をしなければならない、という点では、あまりかわらない部分がある。
図:澁川修一Blog『DQN++ですみません』2005年3月11日付け記事「ブログが炎上する構造の模式図」
・オフラインとオンラインをつなげるという部分についていえば、有効なハブになる人と付き合うこと。(もちろん、それ相応の内容が自分にないと、単なる名刺コレクターにしかならない。信頼を勝ち取るのは俣別の努力が必要)そうしたつながりの中で出会わせることがビジネスソリューションにもなる。(自分の手札を組みかえて、一つの目的に構成していく、ある種のプロデューサー的能力が求められるのだと思う。)
■渡邊
・2001年にWebを設立し、読書日記を公開し始めた。
・「つながり」の面白さを体感した出来事
→電車の中で出会った女子高生が読んでいた本に驚き、URLを手渡した。
→その後も、その女性とはメール交換などをしている。
→何かの「ポイント」で知らない人とつながることができる。
共通項があることによって、つながることができる。つながっていきたいという衝撃に。
→ネットの良い所は、オフラインでは障壁になるような姿格好などを気にせず、表面的な情報に惑わされないということ。
・「つながり」という面でフィールドワークとして、実験的に出会い系サイトへ登録をし、幾人かの女性と出会った。
詳細は、「西行法師プレイ」『まろまろ記』
→なぜ、自分を選んでくれたかということを聞いてみると「読書日記」を読んだからという答えが多かった。そこで、趣味の一致や、ある程度個人のことが公開されていることからも安心感があったという。
・「つながり」を生み出すためには「のりしろ」が必要になる。では、その「のりしろ」とは何か。それは自分の中にあるものを外部化したもの。自分の情報発信でありメディアだ。ソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)の面白さはここにある。それぞれがそれぞれのエリアで自分の「のりしろ」を公開する。そこに誰かがひっかかり、あたらしい「つながり」に発展していく。
・「のりしろ」を自分の外に出し、ネットワークをつくることは所属や組織に依存しない「強さ」になる。
そこで自分は「1人1メディア」を提唱している。
詳細は「1人1メディア」『まろまろ記』
■矢尾板
・オフラインの話を中心にしてみたいと思う。
・ソーシャルネットワークはオンラインのものだけではなく、むしろオフラインの様々なコミュニティは昔からあった。
→総合政策学部の方は政策・情報学生交流会をご存知だと思うし、国際的な学生のネットワークとして、HPAIR(Harvard Project for Asian and International Relations)というものもある。ちなみに、HPAIRは、本年は、8月に日本で開催予定。
・自分自身の経験として、政策・情報学生交流会の経験を例にする。
・交流会で経験した最も重要なことは「人」との出会いである。ある「人」に出会うことによって、今まで知らなかった「人」に出会ったり、新しいコミュニティに出会ったりする。また、その出会いの中で、さらに多くの「人」やコミュニティに出会ったりする。
・このように、ある「出会い」が自分の住む世界を広げていくことを実感した。つまり、「人」との出会いによって輪が広がる。「ハブ」のように多くのネットワークを持っている人に出会うことで、ネットワークやコミュニティが広がっていく。その広がったコミュニティの中で、また多くの機会を得て、さらに拡大するということだ。
・キーワードは、「出会いは自己実現を加速させる」具体的には、「出会いは自己実現を加速させる」中央大学南甲倶楽部機関誌(2001年)『南甲』
・今日も、この研究会に参加してくださった方も、新たな出会いをされているわけですが、このような「出会い」の機会をもっと提供できるようにしたいと思う。
・ネットワークをもつということは、広く可能性を手に持てるということであり、自己実現を高めることが出来るのではないか。
■銭谷
・HPAIRという自分がかかわっている団体においても、将来のリーダーのネットワーク形成を目指すことが目的のひとつとなっている。
・なぜ、ここまでネットワークというのが注目されているのか?今後どのように展開していくのか?Webが発展していくことによって、ネットワークもGlobal化している。これは、社会の決定にどれくらいの影響力を与えていくのかということに大変注目をしている。
【フロアからの質問】
*リンク数をふやすことだけが目的になっているような人も見受けられるが。
→その人物に対する信頼がないとSNSでも、オフライン同様成功はしない。コミュニケーションスキルと十分な周りに対する配慮をおこなうことによってSNSは完成していくのだと思う。(渡邊)
→重要なのは、コンテンツ。その人の魅力。自分に魅力があるからこそ、その結果としてリンクが増えていく。主客逆転しては元も子もない。
→SNSは唯の土台にすぎない。これはネットの弊害でもある。
現在の社会構造としては左図のように図式化することができる。現在の構造は、当事者、Well Known(興味を持っていたり、知識を持っている人)、無関心層の3つのレイヤーに大別できる。当事者は、どのような情報を出すか選択権を持っていて、メディアを通じて発信する。それゆえに本質的な問題が明らかにならない場合がある。そこで重要なのは、Well Known層の人たちががんばって、当事者たちが出してくるメディアを通じての情報の他にある本質的な情報を引き出し、Well Known層や無関心層に情報が伝わってくるようにすることも重要。そのような意味で、ソーシャルネットワークなり手札をどのように使って、実現するのか、ということを考える必要がある。(澁川)
→行動を起こす際に、誰がやるのか、ということは重要。第二臨調行革のときは、土光さんが会長だったからこそ、国民的な運動になった。
*HPなどを通じての情報発信はあるいみ自己表現の手段であると考えるが、これは少々ハードルが高いように思われる。その例としてつくったままのまったく情報発信手段としていかされていないものもある。リンクをするだけでは価値がないといっていたが、それだけでも価値があるのではないか。
→ネットラジオというものがあるがそれは、飲み屋の会話レベルのもの。どの程度の価値があるかはオーディエンスが決めることである。
→メディアを生態系としてとらえるメディア・ビオトープという考えがある。その視点に立つと,
日本ではマスコミの力が非常に強い。たとえば日本の読売新聞は公称約1千万部、朝日新聞は公称約800万部。それに対してニューヨーク・タイムズは110万部、ワシントン・ポストは80万部程度。日本のマスコミは巨木すぎて、個々の情報発信のハードルが高いように思われるがそんなことはない。未来の自分へのメッセージ、未来の自分とのコミュニケーションだと思って記録をとどめることにもまた意味があると考える。
(詳細は「メモのメモ」『まろまろ記』)
→ハードルが高いということには、技術的な問題と精神的な問題があって、技術的な問題については、数年前に比べて格段とハードルは低くなっている。
→携帯とかからでも、手軽にHPとかブログを作ることができる。
→ホームページビルダーを使えば、特別な言語を使う必要性はない。普通にワードの文章を書く感覚でHPを作れる。極論的には、ワードでもHPは作れる。
→精神的な問題点をいえば、2ちゃんねるなどでの「祭り」でさらしあげられる経験を持つ人も多い。確かに最初はそのようなことで身構えてしまうことは多いが、あまり気にしすぎるのは良くない。それよりも新たな人々や考え方と出会う可能性が広がるわけだから、ホリエモンではないが、「命までとられることはない」ので、積極的に向かっていくと良い。
→コンテンツそのものは難しいことは考えず、どのようなものでも発信すると良い。
以上
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