[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:事実と真実と嘘(10)

Itsuka3

僕は、その後、数日間、山川さんの悲しい表情と寂しそうな瞳が頭から離れなかった。もちろん、僕は、山川さんの夢を叶えてあげたいと思ったし、わがままを聞いてあげたいと思った。しかし、それは、僕にとっては、美友里を裏切ることになる。他の男性で、もしかすると、それは裏切り行為ではない、と考える人もいるかもしれない。しかし、僕にとっては、裏切り行為であるし、仮に、美友里が、そういうことをしたとしたら、僕は、裏切られたと感じる。

その週末に、僕は、美友里と会っていると、美友里は、僕に、「なんだか、浮かない顔をしているわね」と言った。

僕は、「そうかな」と言うと、「何か悩みがあるんでしょう」と言った。僕は、いま、僕の頭の中でめぐっている悩みのことを、すべて、美友里に話してしまいたかった。しかし、それを話してしまうことは、美友里に、余計な誤解を与えてしまうことになりかねないし、山川さんのことで悩んでいる、ということ自体、もしかすると、美友里を裏切っているのではないかと思えた。だから、美友里には、この話をすることはできるわけがなかった。

「きっと、女の子のことで悩んでいるんでしょう」と、美友里は、意地悪く訊ねた。

「えっ?」と、僕は、驚いたような声で答えた。

「やっぱり図星なのね」と言って、美友里は、冷たく溜息をついた。

「あなたって、可哀そうな人ね」と、美友里は言った。

「可哀そうな人?」

「なんとなく、そう思うのよ」

「なんとなくって」と僕が、言葉に詰まると、

「そんなに、人に愛されたいの?目に見える愛情の形が欲しいの?そんなに、愛されているという根拠が欲しいの?」

そして、「愛って、そんなものではないでしょう?」と、美友里は言った。

(登場人物紹介)ハジメを取り巻く人々

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