説得と政策

社会の皆に関わる選択を行う場合、自らが望む選択や社会全体が望ましくなる選択を実現するためには、「説得」が重要になる場合がある。これは、家族や恋人などとの最小単位の社会でも同じことが言えるだろう。

もっともシンプルに考えれば、その選択が為されれば、どれだけのメリットとデメリットが発生するか、ということである。もっと簡単に言えば、得するのか損するのか、ということである。(と言っても、女の子を口説くときに、たぶん、そうした得失で口説くのは得策ではないだろう。)

いま、太郎と花子の2人がいるとする。太郎は、花子とクリスマスのディナーに行きたい(つまり、感じるメリットが大きい)と考えている。しかし、花子は、ディナーに行くことから感じるメリットは行ったときに感じるメリットよりも小さい。

花子にとっては、クリスマスの日は、お気に入りのテレビ番組が放送される。その番組を見ることから得られるメリットは、もし、テレビを見ずに、ディナーに行くとしたら、テレビ番組から得られるメリットは、そのまま機会費用となってしまうだろう。ディナーに行かなった場合、太郎はデメリットを感じる。つまり、振られてしまったときに感じる例のキモチである。

ここで、社会全体のメリットを比較してみよう。もし、総和で、ディナーに行かなかった場合の方のメリットが小さければ、社会全体としては、ディナーに行かないという選択は良くない選択であると言える。

しかし、この場合の選択のルールは、2人だけの社会なので、どちらも拒否権を持つような全員一致ルールに近い。そうすると、花子の個人のメリットを考えれば、花子は「行かない」という拒否権を発動するだろう。そうすると、社会の最適な状態と選択の結果が異なるという問題が発生する。

そこで、社会全体にとって良い選択を実現するために、何が必要か。それが、「説得」である。

説得の方法で、よく言われるのは、チカラ・カネ・コトバである。たとえば、花子にディナーに行かないとき以上のメリットを与えるか(補償=カネ)、ディナーに行くとき以上のデメリット(懲罰など=チカラ)を与える方法がある。もしくは、誠意をもって、コトバで説得するかである。(Senのリベラルパラドックスに関する見解や、アダム・スミスが道徳的感情論などで考えるように、共感のようなものが存在するならば、カネもチカラも必要なく、コトバでの解決が可能であろう。)

もし、メリットを与える場合の方が、社会全体のメリットの総和は大きくなるのであれば、太郎は、自分の満足の一部を花子に移転すると、太郎の満足は少なくなるが、社会全体の状態は良くなるし、太郎にとっても花子にとっても、ディナーに行かないよりも良い選択となる。(ここでは、取引費用を考えていない。つまり、取引費用はゼロで考えている。)

つまり、「クリスマスプレゼントで、高価なプレゼントを上げるから、一緒にクリスマスディナーに行こう」という説得が行われるということである。

ここで検討すべきポイントは、次の4点である。

(1)人々は、便益を正しく評価できているか。ブライアン・カプランが指摘するような便益に対する認識バイアスはないか。認識バイアスがあれば、メリットを拡大的に認識していたり、縮小的に認識していたりする。正しく便益を認識することが重要である。しかしながら、合理的無知の問題が存在すれば、それも難しくなろう。

(2)共感や社会的規範、もしくは社会的使命感は、こうした合理的判断に、どのような影響をもたらすのか。
現在は、

(3)取引費用の問題

(4)クリスマスの問題だけではなく、異時点で考えた場合、説得は、どのように行われるか。

こうした説得は、いろいろな政策や交渉の場で行われていることだろう。
結婚という合意形成は、もしかすると、異時点間の説得問題なのかもしれない。

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