ー最近、「戦術」に関する書籍がたくさん出ているけど、それについては、どう思いますか?
書籍になる、文字になる、ということは、記録に残るということだから、いいことだと思います。ただ、教科書に書いてあるからといって、そのセオリー(戦術)というのは、必ずしも正しいというわけではない。ゲームは、状況、環境、その他の条件が変われば、全く変わる水物です。だから、戦術ありき、というのは、リスクが大きいし、できれば避けるべきだと思う。
もちろん、代表チームであれば、監督が自分の戦術にあった選手を呼んで、パーツを組み立てていけばいい。代表監督の仕事は、一定の方向性、フィロソフィー、ディシプリンの中で、チームを適度に微調整しながら、リフレッシュしていくことです。
一方、クラブチームは、選手ありきで考える必要がある。もちろん、監督としてチームにフィロソフィーやディシプリンを与えることが重要だけれども、選手を見極めた上で、その能力を最大限に発揮できる戦術を考えなければならないわけです。
ーチームがうまくいっているな、という状態は、どういう状態ですか?
オーガナイゼーションとインプロビゼーションが両立し、シナジーが発揮されている状態ですね。ベースには、フィロソフィーやディシプリンを置き、それに基づいて、「組織」としてのチームを作る。その上で、選手の「個」の能力を発揮していく。選手は、自分がそのゲームの中で、どのような役割を果たさなければいけないかを、常に認識をしなければならない。これが、インテリジェンス力です。オシム監督が、「頭を使え」と言っていたのは、こういうことなのだと思います。そうすると、「ポリバレント」性が出てくる。
ーいま、世界で最も成功しているチームは?
マンチェスター・ユナイテッド。
ー世界チャンピオンですね。
いや、世界クラブW杯で優勝したからではないです。オーガナイゼーションとインプロビゼーションが両立し、シナジーを生んでいる。ベルバトフが加入して、その完成度はさらに高まったのではないかと思います。選手交代を通じて、バランスを変えることもできる。美しさがあると思います。また、芸術的で美しいサッカーをしていたのは、昨シーズンのアーセナルですね。日本では、ガンバ大阪や名古屋グランパスでしょう。
ーガンバ大阪は、ACLを制し、世界クラブW杯で3位になりました。
ガンバ大阪は、西野朗監督が就任してから、フィロソフィーとディシプリンを変えていないところが強みになっている。ベースがしっかりと出来上がった上に、しっかりとした補強をしている。この点は見習わなければいけません。名古屋グランパスは、フェルフォーセン監督が築いたベースに、ストイコビッチ監督がフィロソフィーを加え、大きな化学反応が起きたと思う。
ー日本代表は?
まだ、模索をしているような気がします。どういうサッカーをするのか、ということを決めていかないと、厳しい戦いが続くと思います。原博美さんが強化委員長になり、方向性が出てくるような気がします。原さんのイメージと岡田さんのイメージが良い形でコラボレーションを持てば強くなると思いますよ。あと、課題は、育成ですね。この点は、時間がかかるので、早めに取り掛からないと、取り返しがつかなくなります。
ー世代交代
世代交代というのは、なかなか難しいのです。どの国の代表チームだって、苦労をしている。日本は、黄金世代から次の世代にどのようにバトンを渡すのか、これは意識的に準備をしていかなければなりません。特に、ロンドン五輪がU-21の大会となれば、空白の世代が生まれてしまいます。国際経験を積む大切な場を失うことになる。5月のFIFAの理事会で決まると思いますが、ケアが必要になってくる。
ー具体的には
アジア最終予選を突破した後、1年間の準備期間がある。これをうまく使う必要があります。若い選手を呼び、欧州遠征に行くことも重要です。五輪代表として活動できないのであれば、フル代表で育てていくしかない。欧州では、各国の代表チームともゲームをするべきだし、クラブチームともゲームをするべきです。秋に、その機会を作るべきだと思います。私たちは、チャレンジャーです。常に挑戦をしていくべきです。
ー話は変わりますが、CLの展望は?
どのチームも厳しい対戦だと思います。ただ、リバプールとチェルシーの対戦は、いまやCLの名物になりましたね。今年の勢いだとリバプールかなとも思いますが、ゲームをやってみないとわからないでしょう。
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