アイオワ州は、それまで本命と言われる候補にとっては、最初の大きな難関であるようである。そして、今回の選挙でも、"Iowa's Surprise"が起きた。
2004年の民主党大統領予備選挙では、本命視されていたハワード・ディーン候補は、3位という結果となり、この党員集会で1位となったのは、後に、民主党大統領候補に指名されるジョン・ケリー候補であった。2位は、ジョン・エドワーズ候補であった。
この歴史のいたずらが、今回の予備選挙でも起きた。本命視されているヒラリー・クリントン候補は3位に甘んじ、アイオワを制したのは、バラク・オバマ候補であった。アイオワの民主党員は、「経験」よりも「変革・変化」を求めた結果となった。オバマ候補の優勢が伝わって来たので、クリントン候補が、アイオワを落とすことがあっても、それは僅差で2位という結果であると予想していた。
1月8日には、ニューハンプシャー州の予備選挙が行われる。もし、クリントン候補が、ニューハンプシャーを落とすようなことがあれば、民主党の大統領候補指名をめぐる争いの状況は一変するだろう。クリントン候補にとっては、ニューハンプシャーは絶対に落とせないものとなった。
一方、オバマ候補にとっても、ニューハンプシャーは落とすことができない重要なポイントとなった。アイオワ、ニューハンプシャーと連勝すれば、その勢いで、いわゆる「メガ・チューズデー」になだれ込める。今回の大統領予備選挙は、2月5日の「メガ・チューズデー」で決まると言っても過言ではない。2ヶ月間の短期決戦だからこそ、「勢い」が重要である。
共和党の指名争いについては、ルドルフ・ジュリアーニ候補が、アイオワを事実上、回避していたため、1月29日のフロリダが焦点になるだろう。アイオワの党員集会当日に、現地に入らず、なぜ、マイアミにいたのか。
それが、ジュリアーニ候補の選挙戦術を垣間見ることができるだろう。ジュリアーニ候補は、全国的な知名度を背景に、またニューヨーク市長としての実績を持って、横綱相撲をしようとしていると考えられる。全ての州で勝つ、少ない票を取りにいくのではなくて、余力を持って、大票田を狙い、一気に、「メガ・チューズデー」で勝利を決めるという戦略であろう。それによって、大統領本選挙に向けて、「強い候補」としてイメージ付けられる。ジュリアーニ陣営は、「いかに、共和党大統領候補指名を勝ち取るか」ではなく、すでに、「いかに、2008年11月に勝利をするか」という戦略なのではないかと思う。
すなわち、民主党の候補指名が短期決戦で終わらず、長引けば、長引くほど、ジュリアーニ候補にとっては有利になるというわけである。しかし、これも、1月29日と2月5日、さらには、3月4日に、ジュリアーニが勝つという前提である。
その前提は、アイオワで、マイク・ハッカビー候補がミット・ロムニー候補を9%差で破ったことが、どのように影響してくるかで変わってくる。このまま、ニューハンプシャーで、ハッカビー候補が再び、ロムニー候補を破ることとなれば、ハッカビー候補は勢いを持って、ジュリアーニ候補との最終予選を、1月29日と2月5日に迎えることになる。
今後の大統領選挙の見どころは、いつ、ネガティブ・キャンペーンが飛び出すか、という点である。これは、候補同士の中傷合戦ではなく、隠し玉である。民主党、共和党とも、お互いに、その隠し玉、切り札を、いつ切るのかというのは、大変、センシティブな問題として、戦略を練る必要がある。
また、ホワイトハウスは、どのような形で、大統領選挙にコミットするかということである。直接的なコミットすることは、現在の状況では難しいかもしれないが、ホワイトハウスの政策判断は、大統領選挙に大きな影響を与えることとなる。仮に、10月頃に、ホワイトハウスが、イラク撤退プランを出したとしたら、どうなるだろうか。
3点目は、副大統領候補である。民主党の指名争いが混戦となった場合、クリントン候補、オバマ候補、エドワーズ候補は、どのような判断をするのか。
今回の大統領選挙、民主党にとっては、何がなんでも、勝たなければいけない選挙である。なぜならば、この選挙で負ければ、12年間、ホワイトハウスを失うということになる。(12年間というのは、民主党が、1980年から1992年までの12年間(レーガン‐ブッシュ政権)、ホワイトハウスを失っていた期間と同じになる)。これは、民主党としては致命的であり、いかにしても回避しなければならないシチュエーションとなる。
そこで、各候補の年齢を考えてみよう。クリントン候補は60歳、オバマ候補は46歳、エドワーズ候補は54歳である。オバマ候補もエドワーズ候補は8年後の可能性もある。すなわち、2月5日で、誰が指名争いのトップを走っているかにもよるが、仮に、クリントン候補が第1位であれば、エドワーズ候補の副大統領候補指名、もしくは、オバマ候補のエドワーズ候補の副大統領候補指名も考えられる。つまり、3位候補の支持票を取り込むことで勝負を決めようとする、ということがあるかもしれない。これは、ニューハンプシャーでの結果やこの1ヶ月間の結果次第であるが、アイオワで、エドワーズ候補が得た30%という数字は、副大統領候補指名のための武器にはなる。
当初は、クリントン候補優勢の中で、第2位のオバマ候補指名というシナリオを予測していた。1位‐2位の最強連合で、予備選挙を圧勝し、本選挙に勢いを持ってなだれ込むという戦略である。しかし、アイオワの結果を見て、このまま、オバマ候補が勢いを持って、ニューハンプシャーを取るのであれば、その可能性は低くなるかもしれないと感じた。(オバマ候補が1位で、クリントン候補が2位の場合に、クリントン候補の副大統領指名の可能性は低いと思われる)
大統領候補指名争いは、この1ヶ月間で、さまざまな篩いにかけられる。断念としての撤退だけではなく、新政権でのポストや政策と引き換えに、選挙からの撤退するケースもあるだろう。そして、大統領指名争いは、全ての州で勝つ必要はない。
政策のみならず、選挙戦略・戦術からも目を離せない。
日本経済新聞:大統領選挙2008特集記事
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