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2兎を追えば1兎をも得ず

麻生内閣は、まさに、景気浮揚と財政再建の2兎を追おうとしている。しかし、この2兎を、本当に追うことができるのだろうか。この答えは、歴史から学べば、「否」である。結局は、1兎をも得ず、という状態になる可能性がある。

歴史の再現

歴史は、繰り返す。私は、近著の中で、1980年代以降の経済危機と政策対応のサイクルについて説明を行ったが、そこで、私が予測し、述べた通りの状態に近づきつつある。良い意味で期待を裏切って欲しかったのであるが、歴史とは皮肉である。

1997年にアジア金融危機が起き、その後、復調傾向にあった景気は、一気に悪化した。これと同時に、参議院選挙では自民党が負け、小さな政府を志向した当時の橋本内閣が退陣し、ケインズ政策を志向する小渕内閣が誕生する。橋本内閣では、いわゆる財政構造改革法を制定し、財政再建路線に舵を切ったタイミングであった。

結果、財政構造改革法は小渕内閣により、凍結され、財政再建への道筋は断たれたという歴史があった。このときの反省は、ひとつに財政構造改革法の中に景気弾力条項を含めなかったため、景気悪化に適切な対応ができなかったというものがあった。もうひとつは、小渕内閣での停止法は停止期限を定めなかったことにある。

これにより、「財政構造改革法」は、景気悪化のある種の罪を背負い、永久に葬られたのである。

次に、財政再建路線に舵を切ったのが、小泉内閣で閣議決定された2011年度までの基礎的財政収支の健全化目標である。いま、麻生内閣では、この閣議決定で決まった目標を先送りすることが、ほぼ既定路線であろう。その理由は、やはり景気悪化である。

積極的な財政政策は有効か?

財政赤字を担保に積極的な財政出動を行い、景気浮上を行う。教科書的に、有効需要の原理に基づけば、確かに正解であるかもしれない。しかし、積極的な財政出動は、本当に効果があるのか、その政策効果の検証がじゅうぶんに行われていないのではないか。

まず、今回の景気悪化は、国内要因よりも国外要因である。これだけグローバル化が進んだ日本の経済環境の中で、国内の需要を喚起すべく、積極的な財政出動を行ったところで、あまり効果が無いと考えるべきであろう。端的に言えば、日本の景気回復のためには、米国の景気が回復することを待たなければならない。

また、消費低迷の問題は、将来不安が大きく関わっていよう。すなわち、年金などの社会保障制度の混乱が、個人の貯蓄率を高め、消費を低迷させていると考えることはできないか。もし、この仮説が正しいとするならば、政府が行うべきは需要喚起ではなく、新しい制度設計に伴う不安の払拭、信頼の構築である。その点で、「安心と安全」は引き続き重要なキーワードとなる。

さらに、制度だけではなく、制度を裏付ける財源の問題まで含めて考えなければならない。すなわち、制度の持続可能性である。これは財政の持続可能性に大きく依存するものであり、いくら良い制度であっても、財源が伴わなければ、制度は成り立たない。

そうすると、現下の危機の中で、どのようなマクロ経済政策を行うべきなのか。ひとつは、北風に耐えられるような毛布は用意するべきである。つまり、景気悪化に伴う経営環境の激変緩和措置、「止血」措置は、財政政策で一時的に実施することは必要である。もうひとつは、財政の持続可能性を高めることである。それが将来不安を払しょくさせ、社会保障などへの信頼を高め、過剰な貯蓄傾向を和らげることができるだろう。

すなわち、財政再建路線の堅持こそが、原則になる、ということである。もちろん、景気の悪化に伴い、税収も減少するのであれば、2011年度までの健全化目標の達成は、歳出面だけではなく、歳入面からも厳しいかもしれない。もし、こうしたバランスの中で、目標の先送りをするのであれば、財政構造改革法と同じ轍を踏まぬよう、「いつまで先送りするのか」ということを明示した上で閣議決定をすべきである。

覚悟を持って、2兎を追え

私は、財政再建に関しては、新財政構造改革法の制定を求めていた。閣議決定であれば、政府の決定であるので、野党との議論は本質的に不要となる。もちろん、閣議決定であるので、尊重はされるべきであるが、法律よりも弱い。法律にしておけば、改正や停止の際には、国会の両院を通さなければならないので、とくに、現在のような「ねじれ国会」の場合には、簡単には財政再建路線を転換することができなくなる。だからこそ、法律の制定を求めていたのである。

麻生内閣の経済政策は、選挙対策としては有効かもしれないが、景気対策としての効果には疑問を呈さなければならない。いま、このタイミングで麻生内閣の経済政策を実施すれば、未来をも失わせてしまうことにもなり得る。しかしながら、国民には選択の機会さえ与えられていない。麻生総理は、早々に政府予算案を修正した上で、予算成立後に衆議院を解散するか、予算案を修正しない場合には、1月の早い段階で衆議院を解散し、国民に選択を求めるべきである。

パズルを難解にしているのは、「選挙」というピースがそこに埋め込まれているからである。麻生総理自身、それを否定しつつも、本当は否定をしていないという矛盾に陥っている。これが支持率低下の要因である。

麻生総理の決断が遅れれば遅れるほど、景気は悪化していくであろう。
政権を手放す覚悟で、景気対策と財政再建に取り組む必要がある。
覚悟も持たず、2兎を追えば、1兎をも得ず、である。

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