【連載小説】Team Policy Dragon: Advocacy 11 : 転落 (4)
国会開会日。通常国会召集のセレモニーが始まるにあたって、温水は、まだ姿を現していなかった。平川は、腕組をし、小詰は、目を瞑っていた。清川は、一息を付いたところで、立ち上がろうとした。そのとき、入口の奥から、一人の人影が現れた。朝田が厳しい顔をすると、平川、小詰、清川も緊張した面持ちをした。
SPに先導された男が手を挙げて近づいて来たのであった。全ての国会議員は、その男に注目をした。温水洋一郎が現れたのであった。温水は、清川の隣に立ち、「フフン」と鼻を鳴らした。そして、「これは闘争だ。負けるなよ」と呟いた。清川は、苦笑いをした。
夕方に、民政党は、内閣総理大臣の問責決議案を提出。そのまま本会議が行われ、問責決議案が可決された。温水は、壇上にて、遠くを見つめていた。同時に、国会内の民自党幹事長室では、問責決議案に対抗するために、内閣信任案を提出することを決定し、衆議院議長に提出した。
衆議院本会議場。異様な空気が漂っていた。張りつめた緊張感。重々しい空気。全てが異常であった。歴史的な変革が起きる瞬間を、誰もが信じざるを得なかった。
福沢は、テレビ中継を見ながら、「いよいよ政界再編が始まるぞ」と言った。佑奈は、「親温水は、出身派閥の林派に、朝田派、黒沼派といったところかしら。そこに、民政党から岡島グループと前川グループが来る」と言うと、福沢は、「民政党は、そういう読みだが、民自党の方は違うな」と言った。佑奈は、「どういうことよ」と聞くと、「親温水は、林派に、清川派、さらに黒沼派の半分といったところかな。あとは、無派閥の連中だろう」と答えた。
そのとき、大きなどよめきが起きた。朝田が反対票を投じたのであった。
佑奈は、「つまり、朝田派は反温水ということね」と言った。
次に、黒沼派の阿川が賛成票を投じた時に、再び、どよめきが起きた。
佑奈は、「黒沼派が割れた」と言った。本会議場で、朝田は、不機嫌な目つきで阿川を見つめた。
そして、民政党の岡島が反対票を入れると、佑奈は、「岡島は裏切った」と言った。福沢は、「なぜだ」と言った。すると、最大のどよめきが発生した。民政党の小詰が、賛成票を投じたのであった。小詰は、顔に大きな迷いと不安の表情を浮かべていた。
福沢は、「なぜ、小詰が賛成なんだ」と茫然とした。すると、福沢の携帯電話が鳴りだした。麻衣が電話に出ると、次の瞬間、「ねぇ、俊ちゃん」と呟いた。
亀坂は反対票、神田は反対票、清川は賛成票、平川は反対票、前川は賛成票と賛成票と反対票が乱れ飛んだ。結果として、賛成票246票、反対票244票という2票差で内閣信任案が可決された。温水は、静かに、遠くを見つめていた。しかし、その眼の奥には悲壮な決意を浮かべていた。温水の覚悟は、このとき決まったのであった。
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