【連載小説】[君は 僕の わがままな 小悪魔? or 天使?] Vol.1:ラブストーリーは突然に始まるの?(5)
あの晩、僕は、ほのかと、寝なかった。ほのかも、それを望まなかったし、僕も、なぜだか、それについて積極的にはならなかった。ルームサービスで、シャンパンを注文し、夜景を見ながら、乾杯をした。ただ、それだけであった。
ほのかは、僕の隣に座り、「また、逢いたいわ」と言った。僕は、「僕も同じ気持ちだよ」と答えると、「でも、東京と京都は離れ過ぎているわ」と言った。「僕は、距離は関係ないよ。たしかに、頻繁に来ることは難しいかもしれないけど、いま、僕は、月に一度は、ここに来て、ほのかに逢いたいと思っているんだよ」と答えた。すると、ほのかは、「嬉しい」と言って、喜んだ。僕は、もう一度、ほのかの顔を眺めた。すると、砂羽の面影だけではなく、数年前に、僕が好きだった絢音にも似ているのではないかと感じた。
僕は、自宅のあるマンションに戻ると、玄関の鍵が開いており、部屋の中に人の気配を感じた。「来ているのか」と玄関から声をかけると、絵里は、「あら、おかえり」と言った。絵里は、外資系のコンサルタント会社に勤めていた。僕とは、どこかの異業種交流会で知り合い、そして、いわゆる、カジュアルな関係となった。僕には、好きな人は他にいるし、絵里にも好きな人がいた。しかし、僕たちは、時には姉弟のように気が合い、一緒の時間を過ごした。姉弟と書いたのは意味があって、絵里は、僕よりも4つ年上の女性で、32歳の誕生日を迎えようとしていたからだ。
絵里は、キッチンで、何かの料理をしているようであった。「絵里、何を作っているの?」と訊ねると、「荘ちゃん、呼び付けにはするなって言わなかったっけ?」と包丁を片手に振り向いた。そして、その包丁を、僕の方に向けた。「ごめん、ごめん。絵里さん、もしくは、絵里ちゃんとお呼びするべきでした」と謝った。すると、絵里は、「まあ、今日のところは、許してあげるわ」と言い、料理に集中し始めた。
テーブルの上には、絵里の作った料理が並べられていた。菜の花のスパゲッティであった。そして、絵里は、「ねえ、荘ちゃん。ティラミスを作ってあげるから、買い物してきてよ。クリームがないのよ」と言った。「絵里ちゃん、ぼくは、温かいうちに、このスパゲッティを食べたいんだけど、それはいいのかな」と訊ねると、絵里は、「もちろんよ」と答えた。
スパゲッティを食べ終わった後、僕は、コンビニまでに行き、絵里に言われた通りのティラミスの材料を買ってきた。そして、絵里は、ティラミスを作り始め、僕は、クリームを混ぜるという仕事を与えられた。僕は、クリームを混ぜながら、京都での話を、絵里にした。
すると、「荘ちゃん、それは、そのほのかっていう娘に、完全に惚れているわね」と言った。
僕は、「でも、僕が好きなのは、砂羽の方なんだけどね」と答えた。「それなら、京都にほのかちゃんに逢いに行くのやめればいいじゃない。簡単なことよ」と言った。
「でも、僕は、とても、ほのかに逢いたいんだ。今、何をしているのだろうと思うと、とても寂しい気持ちになるし、もしかすると、男と一緒にいるんじゃないかと想像すると狂いそうになる」



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