[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:事実と真実と嘘(9)
「山川さん。申し訳ないけど、僕は、君と一緒に行くことはできないよ」
すると、山川さんは、溜息をついて、「そうよね」と答えた。僕は、山川さんの物分かりの良さに驚きを感じた。
「変なこと、言って、ごめんね」と、山川さんは、寂しそうな顔をして、寂しそうな眼を、こちらに向けて言った。
僕は、その眼を見て、何らかの罪悪感が、僕の心の中で生まれた。僕は、山川さんのことを傷つけてしまったのだろうか。僕は、とても不安になり、心配になった。
「山川さん、ごめんね。僕は、君の気持ちも考えずに、一方的に、僕の考えを押しつけてしまった」と言うと、山川さんは、「いいのよ」と言って、バーテンダーにチェックを頼んだ。僕は、「山川さん、ここのお勘定は、僕が払っておくからいいよ」と言うと、山川さんは、「それは、ダメよ」と言って、財布から1万円を取り出し、会計を済ませて、お釣りを財布にしまい、席を立った。
「ねえ、ハジメくん。私は、いつか、ハジメくんと一緒に、どこか遠くに行くことが夢だったの」と悲しそうに言った。
僕は、「ごめん。でも、ブラッセルは遠すぎるよ」と言った。
すると、山川さんは、俯きながら、「じゃあ、近いところならいいの?」と訊ねた。
僕は、「ごめん。距離の問題ではないんだ。山川さんと、2人きりで、行くか行かないかという問題なんだと思う。僕は、彼女を裏切りたくない」と答えた。
すると、「そうね」と言って、寂しそうに、店のドアノブに手をかけた。僕は、「もちろん、2人きりでなければ」と言うと、山川さんは、悲しそうに、首をコクンと縦に振った。僕は、「山川さん、ごめん」と、もう一度言うと、山川さんは、「いいのよ」と小さく呟いた。



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