[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:事実と真実と嘘(13)
「これは、脅かしでもなんでもないの。いま、私たちにとって大切なのは、私たちが、お互いに、この関係を続けていきたいかどうか、ということなのよ。だから、あなたが、私との関係を続けたいのかどうか、イエスなのかノーなのか、それだけなのよ。それ以外は、何も聞きたくない」
僕は、「ごめん」と言った。すると、美友里は、「それは、私との関係を続けられないということ?」と訊ねた。僕は、「いや、そういうことではない。僕が、いま、美友里がした質問に答えることができない、むしろ、僕自身に、答える資格があるのかどうかがわからない、ということだよ。ただ、僕が美友里のことを、確かに、愛している、ことは事実なんだ」と答えた。
美友里は、溜息をついて、「どうすれば、私の質問に答えられるようになるの?」と訊ねた。僕は、「わからない」と答えた。
「ねえ、きっと、事実の中には、知らなくていい事実もあるんだと思う。真実は、必ずしも、私たちを幸福にはしないわ。真実を知ることで、不幸になる、ということもある。だからと言って、嘘を付いていいということではないのよ。だから、あなたには、嘘を付いてほしくないのよ。でも、私は、あなたが、いま話そうとしていた真実については知りたくないわ。だって、その話を聞いたところで、あなたは楽になれるかもしれないけどきっと、私は幸せにはなれないわ」
「そうだね」
「だから、あなたは、あなた自身で、自分の気持ちに結論を出さなければならないのよ。決して、私に甘えてはいけないの。それに、時間がかかるのであれば、私は、それまで待っているから、ゆっくりと考えなさい。そして、その結論が出るまでは、私たちは、逢わない方がいいわ」と言って、美友里は、席を立ち、僕の前から消えた。



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