[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(59)

※本作品は、フィクションで、登場人物、団体、背景は架空のものです。もちろん、主人公の「僕」は、著者と同一人物ではなく、フィクションです。
僕は、その日、弥生さんを抱いた。僕にとっては、初めての異性の経験であった。このとき、どうして弥生さんを抱いたのか、冷静に考えれば、説明が付く理由は一切なかった。その瞬間、僕は、弥生さんのことを心から愛おしく思い、そして、弥生さんが求めていることの全てを僕は叶えてあげたいと、ただ、そう感じただけなのだ。だから、結衣への罪悪感もその瞬間は失われ、そのとき、僕は、ただ、弥生さんを抱くことだけに集中した。何も考えず、ただ、やみくもに、弥生さんを抱き、そして、無我夢中で果てたのであった。
弥生さんを抱いた後、僕と弥生さんはいつまでも抱きしめ合っていた。弥生さんは、これまでの苦悩を全て振り払ったように、安らかな顔をしていた。僕は、その弥生さんの顔を、いつまでも見つめて、そして、何度も口唇を重ねた。
帰り際に、玄関で弥生さんは、僕に後ろから抱きつき、そして、耳元で「ありがとう」と囁いた。僕は振り返り、再び、キスをして、「ありがとう」と言った。僕は、その日は結衣には会わないように、結衣が帰宅する直前に、結衣の家を出た。


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