« [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(55) | Main | [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(56) »

博士論文(学位請求論文)を提出

本日、みなさまのおかげで、無事に、博士論文(学位請求論文)『知的財産権の公共選択分析』を提出いたしました。これまで、ぼくのことを、支えてくださったみなさま、応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。提出直後、両親先生には口頭で、そして、ぼくにとっては幸運の女神だとも思える、とても大切な人にはメールをして提出したことを伝えました。感謝の気持ち嬉しい気持ちと、長くて苦しいトンネルの中で、ようやく出口の光が見えた喜びを知ってもらい、一緒に喜んでほしいと思いました。

これから、論文審査、公聴会と口頭試問があり、まだまだ気が抜けませんが、本当に、ほっと一息です。
引き続き、モチベーションを維持して、来年の3月までがんばっていきたいと思います。

この数年、博士論文のことや、さまざまな、なかなかうまくいかないことで、時に苦しみ、辛く、情緒不安定なときもありました。周りの人々が楽しく遊んでいる姿を見たりすると、本当に羨ましく感じて、そして、スネてしまうことなどもありました。また、世の中では、やっぱり、外形標準で評価されるんだ、ということを、何度も感じました。自分自身の努力や能力が未熟であるということは、十分に理解しつつも、やはり納得ができない、ということも何度もありました。そんなとき、昨日の記事にも書きましたが、「神様が、30歳までは、いかなる苦労をしろと言っているんだ。楽は許さない、と言っているんだ」と自分に言い聞かせ、歯を食いしばって、前に半歩でも進もうとしました。それでも、やはり、心が折れそうになり、泣きたくなることも多々ありました。

この前、ゼミの後輩に、「自分を信じてあげられるのは、最後は自分だけなんだ。だから、自分が自分を信じてあげなければ、誰が自分のことを愛してあげられるんだ」というようなことを言いましたが、これは、すべて、自分が、苦しい時に、自分に言い聞かせてきたことです。

この話は、これまで、あまりしてこなかったのですが、約4年前、2003年の春ぐらいから、文章が全く書けなくなったことがありました。文章が、全く頭の中に浮かばなくなり、一文字も打てなくなりました。その原因は、当時行っていた仕事に関連していて、村上春樹風に言えば、「雪かき」的に文章を書いていたのでした。当時は、ぼくの中に、お決まりのフレーズ・表現を、お決まりの文章の流れ、リズムに乗せて文章を作るということをしていました。だから、当時のぼくの興味や楽しさは、今から思えば、文章の内容よりも、技術的な部分、つまり流れやリズムといったところで芸術的かどうかということに求めていたようにも思います。それゆえに、自分の少ない知識を出し切ってしまったこと、つまり、カラカラの状態になってしまったことや、文章の書き方そのものへの悩みによって、文章を書くことができなくなったのでした。実は、ここは悪循環です。内容を高めるための知識が出し尽くしてしまっているために、技術で勝負しなければならなくなります。しかし、技術でカバーできるということは、実はあまり大きくなく、そのために、文章がかけなくなる、そうすると、さらに焦るので、技術に走るという循環が始まり、出口の見えないスランプに陥るのです。

そこで、ぼくは、まずは、知識のストックを、貪欲に行おうとしました。どんな知識や情報でもインプットしようと、新聞などのメディア情報、書物・論文、いたるものを読みあさりました。そうしたことをしていくうちに、自分が、これまで学んできたことが本当に浅いものであることに気が付き、学問の古典を追い求め、歴史的な資料を読み、自分の中で掘り下げていく作業を進めました。

もうひとつ行ったことは、とにかく、さまざまな文章を書いてみるということでした。そして、その経験を学術論文の執筆にフィードバックしたいと思いました。仕事として「雪かき」的に書くのではなく、楽しみながら書くということをしようと思いました。このブログで、できるだけ毎日記事を書こうということも、小説を書くことも、実は、この作業の一環です。

これは、文章を書くことだけではなく、シンポジウムやコンファレンスの企画についても同じ状態でした。当時の仕事では、自分が企画運営を担当する大きなシンポジウム・コンファレンスが2回(半年ごと)ありました。各コンファレンスで、メインシンポジウムの企画10個‐20個のワークショップの企画を作成するわけですが、アイディアには限界があり、毎回の企画はかなり大変でした。全てを作るわけではないのですが、テーマを決めて、出演者を決めて、ということについては、常に知識や情報をセンシティブに、インプットし、ストックをしておかないと、アイディアが不足してしまい、スランプに陥ってしまいます。ぼくが、2004年末に、ある職を任期満了に伴い、退任したのは、その団体のさらなる発展のためには、新しいアイディアが必要で、そのためには、自分が交代することがベストであろうと感じていたからです。(当時は、この他に国際会議もあり、年3回は、300名規模のコンファレンスの運営に関係していました。)

(この点では、やはり、同じ人が長期間、同じポジションにいることの弊害だと思います。空気の入れ替えではないのですが、新しいアイディアを常に保つためには、ある程度の人事的なターンオーバー制というのは重要かもしれないと思います。担当者は疲労し、そして、アイディアは疲弊しますので。その点の克服には、デュアル・システムが有効かもしれません。特に、方法論や性格の違う2人を組み合わせることが重要だと思います。イメージは、太平洋戦争のときの米国太平洋艦隊総司令官のニミッツが、ハルゼーとスプールアンスのターンオーバー制にしたようなイメージです。)

そして、このような作業を進めてきて、回復してきて、ようやく今年に入り、博士論文を書きだすことができるようになってきました。かなりの遠回りをしてきたようにも思えますが、「急がばまわれ」ということで、当時は、焦ったり、不安になったりしたけれど、いまは、遠回りしたことが自分の成長につながったと思っています。また、遠回りしたことで、さまざまな多くの出会いができたことも、新たな財産を得ることもできたと思います。さらに、やはり、「」というのも重要だと思いました。

まずは、みなさまに御礼を申し上げます。

さて、論文では、知的財産権の本源的意義を検討し、制度の本来の性質について、公共選択論の視点より考察を行いました。それにより、「制度の失敗」の問題を指摘し、いかに、市場の歪みを小さいものにして、一方で、生産者のインセンティブを確保するかという問題を検討しました。また、法制度のエンフォースメントの問題に着目し、途上国において、知的財産権のエンフォースメントを高めるためには、どのような政策対応が必要かという問題についても、公共選択論の視点より検討を行いました。

|

« [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(55) | Main | [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(56) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/27563/17219918

Listed below are links to weblogs that reference 博士論文(学位請求論文)を提出:

» 文章上達に役立つ本 [文書と文章の便利ページ]
文章上達に役立つ本を探すならこのページ。文章上達については、文例集のような便利なサイトはなかなかありません。やはり沢山読んで、沢山書き続けること、これが唯一の秘訣でしょうか。さらに言えば、その継続を続けるための動機付けができれば何よりですが、それ以前に書くことが苦痛では続きません。そこで、文章上達に少しでも役に立つ本をいかに紹介しました。是非参考にしてください。なお、以下に紹介した書籍は、時々新しく出版されたものに変更しております。忘れた頃に再訪してみてください。文章技術を知...... [Read More]

Tracked on November 29, 2007 at 10:01 PM

» 論文の書き方 [文書と文章の便利ページ]
論文作成に役立つ本を探すならこのページ。卒業論文、学術論文、研究レポートの他、一部の書籍やビジネス文書も論文の書き方の応用であると考えることができます。ここでは論文を作成するに当たり、役立つと思われる本の紹介をします。なお、以下に紹介した書籍は、時々新しく出版されたものに変更しております。忘れた頃に再訪してみてください。論文の書き方レポート・論文の書き方入門大学などの講義でレポートや論文の提出を求められ、どのように書けばいいのかとまどった人におすすめの1冊。レポートや論文のま...... [Read More]

Tracked on November 29, 2007 at 10:26 PM

« [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(55) | Main | [連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(56) »