[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(42)

※本作品は、フィクションで、登場人物、団体、背景は架空のものです。もちろん、主人公の「僕」は、著者と同一人物ではなく、フィクションです。
「そして、天才は、その天才性ゆえに、自らを追い込み、追い詰めてしまうのかもしれない。自分の中にあるコントロール機能は、その才能を抑制できないから、かなりの不安定性を、自らの中に抱え込むことになる。精神的にはかなり不安定になるし、エキセントリックな衝動を持つことになるかもしれない。バランスを自分で取ることができなくなってしまうんだね。だから、最終的に、自らを死に追い込んでしまうようなことになってしまうのかもしれない。」と、僕が言うと、結衣は、「その通りね」と言った。
「でも、それは、その世界が自分一人だけの世界であって、だから不安定になるんだと思う。その世界に、2人目、3人目のプレイヤーが存在して、その人間関係の中で、安定性を確保するということは可能なのかもしれない。つまり、自分の世界に、他者という存在を認識することが重要なんだ。家族、恋人、親友といった存在が、その世界に認識され、表層化されることで、その世界が安定すると思うんだ。」と、僕は言った。
結衣は、「ハジメくんが言いたいこと、私にはわかるわ」と言った。
僕は、「僕は、天才でもなければ、特別な才能も持ち合わせていない、ただの凡人だけれども、僕には、結衣の存在が必要なんだ。」と言った。結衣は、「嬉しいわ」と言った。僕は、結衣の肩に手を回し、静かに、顔を結衣に近づけた。1年前に拒絶されたことを思い出し、恐る恐る、口唇を結衣に近づけた。


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