[新連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(3)

※本作品は、フィクションで、登場人物、団体、背景は架空のものです。もちろん、主人公の「僕」は、著者と同一人物ではなく、フィクションです。
何度も、山川さんがセックスをしていなかったことを説明することで、僕の頭の中の大きな混乱と胸の中の強い嫉妬心を抑えようとした。しかし、いくら考えても、山川さんが、教室の中で、セックスをしていなかったということは説明できなかった。むしろ、山川さんがセックスをしていたということは完全に説明ができた。僕の中の山川さんの笑顔は完全に失われた。そして、深い絶望だけが残った。このようにして、僕の13歳の淡い初恋は終わったのであった。
その後、数ヶ月間、僕はすべてのことに対するやる気を失い、そして、どうでもいいと思うようになった。自分の存在価値すらも考えることができず、新しい人間関係の構築も興味がなく、ただ、毎日、無駄な日々を過ごしたのであった。
その年、林間学校の行事があった。僕は、林間学校で、オリエンテーションをしたり、山に登ったりするということが、なんとも馬鹿らしく感じた。山の上で食べるお弁当がおいしいと言われても、その「おいしい」という感情を得ることすら、僕にとっては無価値であった。
中学生の頃の男の子は、一般的には、非常に異性に対する興味が高まっている。体育の授業も別になるし、異性というものを非常に気にするようになる。そして、異性の身体に興味を持ち、見たり、触ったり、という欲望も生まれる。そして、セックスというものに対し、必要以上に欲望を感じたりする。そうした欲望が混ざり合って、男の子は、女の子に、さまざまなイタズラをしたりする。スカートをめくったり、胸に触れたりする。僕のクラスでも、そういうイタズラが徐々に始まった。
僕は、そういうようなイタズラには興味がなかった。もちろん、山川さんには、あの時までは、興味があったし、もしできることならば、山川さんの手を握ったり、キスをしたりしてみたかった。しかし、他の女の子に、そういう欲望を感じることはなかった。そのとき、僕にとって、そういう欲望すらも無意味だったのである。
林間学校の1日目のオリエンテーションの途中で、僕は足を骨折した。しなければ良いのに、丘を駆け下りていたら、くぼみに足をひっかけ、そのまま転んでしまったのだ。転んだ時に、僕は、確かに、自分の右足から、ボキっという音がしたのを聞いた。僕は、その瞬間、骨折したということを認識した。その後、痛みを感じるとともに、山の上で食べるお弁当を食べなくて済んだということに瞬間的に理解した。僕は、骨折という犠牲によって、あまりにも無価値だと思っていた山登りと山頂で食べるおいしいお弁当の洗脳から解放されたのである。僕は、林間学校から途中離脱した。
そのとき、僕は、「人生こんなもんだろう」という悟りがさらに深まった。


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