[新連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに
僕は、お気に入りのクラシックの音楽を聴きながら、ボーモアの15年物をストレートで一気に飲み干した。そして、目を閉じながら、いま、ゆっくりと回想を始めた。
彼女と彼は、幼いころからの仲だった。いわゆる「幼馴染」という仲である。僕は、何度も引っ越しをしていて、「幼馴染」という感覚がわからない。だから、「幼馴染」という関係が、よく小説やドラマで描かれるように、永遠の恋人のように発展するのか、それとも恋愛対象になんてならないのか、そういうことは、あまり実感が持てない。
彼女と彼の間には、少なからず、前者の、永遠の恋人になる可能性はあっただろうと思う。生まれた時から、ずっと傍に暮らしていて、相手が、お互いに、相手が存在しない生活を想像できないくらいの「幼馴染」であった。恋愛感情があったのかどうか。そもそも恋愛感情とは、どういう感情なのだろうか。相手に好意を持つことが、その感情なのか。それとも、相手に性的な欲求を持つことなのか。さまざまあるかもしれない。少なくとも、彼女は彼に、好意を持っていたのは確かであった。それが恋愛感情に依るものなのか、それとももう少し別な家族的な好意であったのか、それは今となっては誰にもわからないだろう。そして、少なくとも彼は彼女に性的な欲求を抱いていた。彼は、彼女を裸にし、彼女に自分を受け入れてもらいたいという強い願望を持っていた。彼がそのような性的な感情を持ち始めたのは、高校に入学をした頃からであった。彼が彼女に持つこうした性的な願望は、彼女だけを特定の対象とした願望であったのか、それとも男性が思春期の時に抱く一般的に、広く異性に向けられる性的な好奇心だったのか、それは本人にもわからなかったであろう。
彼女と彼は、同じ小学校を卒業し、同じ中学校を卒業した。高校も地元の公立高校に共に入学し、一緒に、東京の大学に進学した。僕が、彼女と彼に出逢ったのは、大学に入学した頃であった。そして、彼女と彼が僕と出会ったことによって、彼女と彼の関係は、少し変化した。なぜならば、彼女と彼の間の閉じられた関係に、部外者として僕が新たに加わったからである。
結論から言えば、彼女が彼に持つ好意は変わらなかった。彼女は彼を家族のような存在として認識することになり、彼が彼女に持つ性的な願望は果たされなかった。なぜならば、彼女は僕と付き合うことになったからだ。
彼女の名前は、ユミと言った。ユミは、僕にとって3人目の彼女であった。



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