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[連載小説]いつか君にふたたび出逢うときまでに:遠い過去の記憶(26)

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※本作品は、フィクションで、登場人物、団体、背景は架空のものです。もちろん、主人公の「僕」は、著者と同一人物ではなく、フィクションです。

 人間は、誰でも、この欲望を持っている。しかし、この欲望を、倫理観、道徳観というような内生的な制約、あたかも、スミシーズが自らの手足をマストの柱にくくりつけたような自制心と、外生的な制約の両方で、この欲望を抑制する。

 人間社会における法律や制度、その他のルールとは、人間の弱さゆえに発展したものである。もし、すべての欲望が人間の内生的な制約で抑制することができるのであれば、外生的な制約は必要ない。しかし、人間は、往々にして、欲望が自らの内生的な制約を上回り、その欲望を実現させようとしてしまう。そのために、社会的な規律として、法律や制度が必要なのである。さらに、価値観が異なれば、制約すべき欲望も異なる。ある社会においては、認められる欲望も、別の社会においては認められないということは、たくさんある。もし、さまざまな価値観を持つ者が同じ社会に住まうとするならば、内生的な制約だけではなく、社会に住まう人々の間で明示的に合意された外生的な制約が必要となる。それが法律であり、制度であり、ルールなのである。これは、国家的な枠組みだけではなく、一般の家庭、すなわち、結婚生活の中でも同じことが言えるし、恋愛相手との関係の中でも同じことが言える。結婚にも恋愛にもセックスにもルールが必要な場合があるのである。

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