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村上春樹とノーベル文学賞

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 さて、今年のノーベル文学賞の候補に、村上春樹氏が挙げられている。
 本年度のフランツ・カフカ賞を受賞することが決定したことがその根拠だ。この2年間、フランツ・カフカ賞を受賞した作家がノーベル文学賞も受賞している。さて、村上春樹氏は、その快挙に続くのか。

 フランツ・カフカ賞に続き、本年度はフランク・オコナー国際短編賞も受賞した。米国、欧州、ロシア、中国など世界各国で村上作品が評価を受けている。訳書もさまざまな言語で出版されている。

 村上作品が受け容れられる理由の、ひとつに「同時代性」という説がある。主人公が「やれやれ」と、冷ややかに社会を見つめている。主人公は、その世界にあまりかかわりをもちたくないのだが、いつのまにか、巻き込まれ、コミットメントをしている。それが村上作品の特徴だと思う。そして、「僕」の隣にある「深い闇」の存在だ。その「深い闇」の正体はわからないのだが、これは誰しもが抱えている「心の闇」なのだろう。常に、ハッピーではなく、何かしらに囚われている現代社会そのものなのだ。

 『アフターダーク』が最近文庫化した。読者のひとりとして、村上春樹氏は、次の段階に行こうとしている気がする。そう、井戸の中の壁を超えたように。カフカ少年が森の中に入ったように。
 本人が述べるように、アフォリズム、デタッチメント、次にストーリーテーリングがあって、そしてコミットメントの段階に来ている。これが『ねじまき鳥クロニクル』に来るまでの過程だ。その後、『海辺のカフカ』があって、『アフターダーク』で、さらに次の段階に行こうとしている。

 ぼくは、村上春樹氏に対し、ノーベル文学賞という最大の権威と、どのように立ち会うのかが楽しみだ。そこから、新しい村上春樹作品が生まれるのではないかと思っている。

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