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夜空のさき(60)

 「僕は、僕のために、さきを探し出します。だから、報酬とかはいりません。本はお預かりいたします。まだ、よく理解はできていないけれど、わかっているのは、あなたもさきを通じて、自己治療をした仲間だということ。僕は、さきを見つけ出すことで、自分自身に出会い、その治療は完了すると思うし、あなたは、さきに、その本が手渡ることで、あなたの治療は完了するのだと思う。だから、僕は僕のために行動するのであって、あなたのために行動するのではない。ただ、僕はあなたの意思もさきに伝えます」

 「ありがとう」と、平嘉夫は言った。「本当であれば、私自身が自ら終わらせなければいけない作業なのであるが、さきは、私よりも君と逢うことを望んでいるはずだ。せめて、私の意思を伝えてもらえれば、私はそれで良い」

 僕は、神山さんと、平嘉夫の家を出て、大通りでタクシーに乗った。タクシーの中で、僕と神山さんは黙っていた。僕は、改めて、さきを失った気持ちがせつなくなり、どこでもいいから、大声でさきの名前を叫びたくなった。

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