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デタッチメント × コミットメント

 さて、前回、村上春樹作品の魅力は、「デタッチメント」と「コミットメント」にあると書いた。そして、作品を重ねるごとに、それは進化しているとも書いた。でも、この書き方には、少し誤解が生じてしまうかなと思った。というのは、前回に村上春樹さん自身の発言を引用したけれども、最初から「デタッチメント」と「コミットメント」の両方がはっきりとあったわけではなくて、たぶん、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のあたりまでは、「デタッチメント」が中心になって、アフォリズムからリアリズム、ストーリーテイリングの段階に移っていた。むしろ、「ある種のコミットメント」とは距離が置かれていた。

 『羊をめぐる冒険』に登場する右翼の大物の秘書や『ノルウェイの森』に登場する突撃隊や「僕(ワタナベ)」が住んでいる寮こそ、「ある種のコミットメント」の象徴と言える。この「ある種のコミットメント」の象徴に対し、「僕」は秘書に対しては、嫌悪感をあらわにしているし、突撃隊なり「僕(ワタナベ)」が住んでいる寮に対して、冷ややかに距離を置いている。これが、世間からの「デタッチメント」になってくる。
 つまり、社会はどうなろうとも、僕には関係ない。政治がどうなろうとも、僕には関係ない。僕は僕。ただ、それだけだ。というような、ある種の悟り的な心境で、同時代の社会変動を見ているのである。

(「政策空間」6月号に所収作品)

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