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村上春樹作品は、なぜ世界に受容されるのか?

 本年のフランツ・カフカ賞を村上春樹氏が受賞することが決まった。この2年間、フランツ・カフカ賞を受賞した作家は連続して、ノーベル文学賞も受賞しているから、もしかすると、本年度のノーベル文学賞は、村上春樹氏なのではないか、という期待も高まっている。もし、村上春樹氏がノーベル文学賞を受賞すれば、川端康成氏、大江健三郎氏に続く日本人で3人目となる快挙だ。

 村上春樹氏の作品は、30ヵ国以上で翻訳されているという。世界各国において、村上作品がどのように受容されているのかについては、『文學界』の2006年6月号に掲載されている「ワークショップ:世界は村上春樹をどう読むか」という2006年3月26日に東京大学で開催されたワークショップの記録を読むと知ることができる。一言で言えば、世界的な「ハルキブーム」が起きているということだ。

 また、インターネット上のWikipediaで「村上春樹」と検索してみると、「1996年に『ニューヨーカー』で11ページに及ぶ特集記事が掲載され、2005年には『海辺のカフカ』の英語版"Kafka on the Shore"がニューヨーク・タイムズの「The Ten Best Books of 2005」に選ばれるなど、海外での評価も高い」ということが紹介されている。さらに、2006年5月7日付の朝日新聞の朝刊に、「中国では大学生3人に2人が村上春樹さんの小説を読んでおり、90年代末以降、村上さんと共に翻訳が多い日本作家は渡辺淳一さん-。筑波大大学院図書館情報メディア研究科で学ぶ2人の中国人留学生の最近の調査でこんな結果が明らかになった。中国社会の現実が両氏の文学を必要としているようだ」という記事が掲載されていた。この調査で、村上作品の読後感は、「「孤独と無力感に満ちている」が81%と多く、「社会システムや共同体を冷ややかに傍観」(39%)、「大量の性描写」(35%)」という印象を中国の大学生は感じているようだ。

 村上春樹作品の代表作といえば、『羊をめぐる冒険』(1982年)、『ノルウェイの森』(1987年)、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)、『ねじまき鳥クロニクル』(1994年、1995年)、『海辺のカフカ』(2002年)などが挙がるだろう。

 余談だが、個人的には、『国境の南、太陽の西』(1992年)に思い入れがあったりする。というのは、昔付き合っていた女の子から、「君のことみたい」と何度か指摘をされ、事実上、恋人関係が終わったあとに、彼女のことを思い出しながら読んだ記憶があるからだ。

 ちなみに、そのとき、繰り返し繰り返し、中島美嘉のアルバムを聞いていて、「雪の華」が自分の中では、『国境の南、太陽の西』のテーマソングになってしまっている。

 あと、『羊をめぐる冒険』と『ダンスダンスダンス』も思い入れが深い。これもある女の子に勧められたものなのだが、米国旅行でとても心の支えになった。

 こうした村上春樹作品は、なぜ人々に受容されるのだろうか。このあたりのことを考えて行くと、現代社会の構図なりヒントが見えてくるように思える。

(「政策空間」5月号に所収作品に一部加筆)

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