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真夜中のさき(15)

 待ち合わせの改札に着いたとき、僕の姿を神山さんが見つける方が先だった。「こっちだ、こっち」と、人ごみの向こうから、声が聞こえた。「あ、神山さん」

 僕が神山さんに近づいて、「遅くなってすみませんでした」と理不尽な謝罪を述べると、神山さんは、「まあ、よしとしよう」と言った。心の中では、「何が「よしとしようだ」と思いつつも、「いや、すんませんでした」と、もう一度謝った。

 神山さんは、「まずは腹ごなしかな」と言った。「食欲はあるのか?お前は、失恋すると、まず、全てのやる気を失うからな。食欲なんかも、全く無くなるだろう。残るのは、性欲ぐらいか?」と言った。僕は、「性欲も、もちろん無くなりますよ」と言った。神山さんは、華で笑いながら、「嘘付け。性欲は高まるくせに」と言った。僕は、「嘘じゃないですよ」と、学生の頃のように、お互いにからかいあった。

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さようなら

愛しき人よ、さようなら
夜空に映るあなたの顔が
まだ愛しい

昨夜 見た夢の中
あなたと本屋で出会った

あなたは本を探していた
僕は合わせる顔が無いから
気づかないふりをして
通り過ぎようとした

でも どうしても切なくて
あなたの笑顔を見ていたから

僕は勇気を振り絞り
あなたに声をかけた

強く抱きしめたい
あなたのぬくもり感じていたい
いつまでも

あなたは優しく微笑んだ
その微笑だけで僕は嬉しくなって
明日を生きていけるんだ

でも

さようなら さようなら さようなら
さようなら さようなら さようなら

生きていれば またいつか
どこかで会えるかもしれない

そのときは僕はちゃんと
あなたと向き合えるかな

今は 怖くて ゆっくりと顔をあげられない
話すことさえ うまくできない

ねえ あなたはいま何を思っているの?

さようなら さようなら さようなら
さようなら 僕の愛しきあなた

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真夜中のさき(14)

 新宿に着いたとき、時計を見ると、18時45分になるところであった。神山さんは、自分は平然と時間に遅れるくせに、人が遅刻することには厳しかった。昔から、僕は神山さんに、それで怒られたものであった。僕は、待ち合わせの駅の改札に10分前から待っていることにした。僕が改札に向かって歩いていると、携帯電話のバイブレーションが震えた。表示を見ると、神山さんだった。

 「もしもし?」と、僕が電話になると、「遅いよ」と神山さんは言った。「まだ、待ち合わせ時間前ですよね?」と、僕が聞くと、「それはそうだけど、俺はもう到着しているんだよ」と言った。「そんなこと言ったって」と、僕が静かに反抗すると、「いいから早く来いよ」と言って、神山さんは電話を切った。神山さんという人は、いつもこんな調子であった。

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真夜中のさき(13)

 僕は、いくつかの重要な仕事の指示をして、会社を出た。僕は、まだ現実を受け入れることができるほどの心の器を用意できていなかった。ナツコさんが存在していたであろう空間の空気を吸うことがとても辛かった。それが、自分の会社であろうと、その場にナツコさんがいないとしても、ナツコさんの影を想像することだけで苦しい気持ちになったのである。気分が落ち着かず、幸いに時間もたっぷりあったので、虎ノ門から赤坂見附まで歩くことにした。僕は、歩きながら、ユキコさんのこと、麻衣のこと、ユミのことを思い出していた。そして、これまで、僕が関わってきた全ての女性のことを考えていた。そして、改めて、ナツコさんという存在が僕の中で、とてつもなく大きくなっていたことを知るのであった。僕の中には、ナツコさんに会いたい気持ちと会うことの恐怖の気持ちが入り混じっていた。そして改めて、僕はナツコさんを求め、またナツコさんを愛するのであった。

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真夜中のさき(12)

 「つまり、社長は、もっと自由に生きることができるんです。その権利があるんです。たまには、休まなければ、人間、どんな優秀な人でも倒れてしまいますよ。社長は、いままで働きすぎていたぐらいなんです。いま、ここでゆっくりと休んでもらうことが社長のお仕事です」

 「ありがとう。レイコさん」と、僕は言った。

 「ゆっくりと休んでください」

 「ありがとう。僕は、レイコさんみたいな素晴らしい部下を持てて、そして仕事のパートナーにすることができて、本当に幸せだ」

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I Love You-クリスマスに捧げる神の言葉-

文章を書く仕事をしていて思うことは、文章とは神との対話の中で生まれるものであるということ。
まさに、僕たちは、無意識の中で耳を澄まして、神の言葉を聞こうとしている。そして、その言葉を得たとき、人々を感動させるような文章が書けるんだ。

僕たちは、神々の使徒として、神々のスピーチライターとして、神の言葉を、無意識の中で得て、意識の中でそれを文字という形に変換する。

それが、僕の使命だ。

僕は、サンタクロースに、何かをおねだりするとしたら、「言葉」が欲しい。彼女の心にしっかりと届く僕の「言葉」が。そして、初めて僕は、他の誰のためにではなく、僕のために、そして君のために、この言葉を、君に捧げる。

"I Love You"

そして

「僕は、どんなときも、ずっと君の中にいる」

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真夜中のさき(11)

 すると、レイコさんは、ふと思い出したように、「社長、そういえば、ナツコさんが来ましたよ」と言った。僕は、「ナツコさん?」と聞いた。「はい。昨日の午前中にナツコさんが来て、特に用事はなかったようなんですけど」と言った。僕は、少し黙って頷いた。

 レイコさんは、「社長には、仕事よりももっと重要なことがあるはずです。いま、するべきことは、仕事ではなくて、もっと別なこと。私が言うのは、とても僭越なのですが、社長は本当に優秀で、その能力は高く評価されていると思います。だから、暫くサボっちゃったぐらいで、仕事がなくなるようなことはないです。いつでも、仕事がしたくなったら、仕事ができる。それぐらいの我侭が言えるぐらい、社長は優秀な方です」

 「ありがとう。レイコさんに褒められると、とても嬉しいよ」と、僕は言った。

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真夜中のさき(10)

 「いま、来たところだよ。仕事は順調のようだね」と、僕が言うと、レイコさんは、「社長がいないと大変ですよ。でも、社長には、早く元気になってもらいたいので、その間はなんとかふんばります」と言った。

 「迷惑をかけるね」と言った。そうすると、「いえいえ。社長が復帰したら、私も長期休暇を取らせていただきますので。それでおあいこです」と言って、笑った。

 「それは、僕にとってとても大変なことになりそうだね」と言った。

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フットサル

火曜日に、澁川さんにお誘いいただき、フットサルの練習に。

隣で練習していたカレッツァ、すごすぎです。
その模様は、澁川さんのブログにて。

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世の中はクリスマス

土曜日のクリスマス、車混んでいるし。デパート混んでいるし。
アンテノールのケーキが食べたくて、京王百貨店新宿店のアンテノールに行きましたが、買うまで30分ぐらいかかりましたよ。時計も携帯も持たず、ふらふらと買い物しに来たので、実際、どのくらい時間が経過したのかわかりませんでしたケド。新宿まで、いつもは車で10分もかからないのに、30分以上かかるし。。。
CDも持ってこなかったので、FMラジオを聴きます。クリスマス・ソングがかかります。切ないねぇ。。。

昼間は、用事で高速道路に乗ったのですが、首都高速がほとんど動かず。すぐに高速道路から下りて、暫く一般道を走りました。平井堅の「歌ばか」で、POP STARをリピートしまくり。
レインボーブリッジが好きですが、さすがにクリスマス・イブにレインボーブリッジ渡る度胸はありません。昔、5年前に夕方にレインボーブリッジを通過しようとしたら、1時間以上かかった経験があります。

こんな夜中に、原稿書いている僕は、たぶん、サンタさん的には悪い子なので、サンタさんは来てくれないと思うのですが、東京スポーツにこんな心温まる記事が。(東京スポーツ読んでディープインパクトの相手を考えている時点で、サンタさん的にはNGな気がしますが)
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「クリスマスイブの深夜、トナカイの配達を特別に許可します」-。米メリーランド州のアーリック知事は23日までに、感染病予防のためトナカイなどの搬入を禁じる州法に例外を認める宣言を出した。「トナカイが入れないなら、どうやってサンタクロースは来るの」。米紙ワシントン・ポストによると、学校で先生からこの州法の存在を聞いたリッキー君(10)は不安になった。帰宅すると早速、同州議員を務める父親のインパレリア氏に相談。「不意を突かれた。リッキーは正しい」。同氏のロビー活動の結果、知事は「良い子にプレゼントを配る目的に限り、赤い鼻のトナカイが24日深夜、メリーランド州上空を飛行することを認めます」との宣言を出した。

東京スポーツ平成17年(2005年)12月25日(日曜日)27面
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いいお話ですね。クリスマスだからこその温かみのあるお話ですね。the west wingでも、毎シーズン、クリスマスの話があって、人道的、倫理的なお話や心温まる話、考えさせられる話があるわけですが、クリスマスの特別番組もぜひこうした趣きが欲しいですね。僕は、ディケンズの「クリスマス・キャロル」が好きなわけですが、あれもクリスマスならではのお話。

メリークリスマス!

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真夜中のさき(9)

 僕は、新宿に行く前に会社に寄ってみようと思った。レイコさんは優秀だし、仕事を任せておいても心配はしていないのだけど、やはり社長としては、一週間も会社を放っておくのは、あまりにも無責任だった。もちろん、レイコさんからは、たまに電話があって、必要最低限の指示は伝えていた。

 僕が、虎ノ門の会社に着くと、レイコさんはパソコンとにらみ合いをしていた。もちろん、僕のことは気が付かないようであった。

 「無用心だね」と僕は言った。

 「あ、社長。こんにちは。いつからいらしてたんですか?」と、レイコさんは言った。

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真夜中のさき(8)

 僕は、シャワーを浴びて、久しぶりに髭を剃った。確かに、無精ひげが、うざったくなっていて、それがすっきりしただけでも、ひとつの気分転換だった。僕は、ストライプのシャツに、グレーのジャケットを羽織った。季節は、いつのまにか秋が深まっているようであった。肌寒く、夏は僕をここに置き去りにして、どこかに行ってしまったのだ。僕は、夏がとても強く愛しく思った。もし、あのときに、何かの間違いをしなければ、いま、僕の人生はもっと違っていたはずだった。このような状況になったのは、誰のせいでもない、僕の責任なのだ。それは、夢の中で、ユミが僕に教えてくれた最も重要なことであった。でも、悔やむことがたくさんありすぎて、少しは晴れていた気持ちが、また暗い気持ちになった。最近の僕の心情は、こうした気持ちの行き来が激しかった。夜は、特にとてつもなく寂しくなり、そして眠れぬ日々が続いた。朝になることを確かめ、そこで初めて安心して、浅い眠りにつくことができたのであった。

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真夜中のさき(7)

 僕と神山さんの付き合いは大学以来の付き合いだった。よく、新宿とか渋谷のバーに二人で出掛けていって、女の子をナンパした。神山さんは、女の子に声をかけ、その気にさせることが上手かった。もちろん、大学在学中に麻衣と付き合っていたときは、僕はその気はなかったから、神山さんは一人でそういうことをしていたようだが、僕が麻衣と別れてからは、一緒に、そういうことにも誘ってくれるようになった。神山さんが女の子を口説いている間、僕はその横で、その女の子の連れとくだらない話をしていたりした。そんなこんなで、一晩限りの恋愛を何度も繰り返したのであった。多分、「悪い毒を抜こう」というお誘いは、今夜、女の子を口説いて遊ぼうということなのだろう。僕は、ナツコさんへの未練が残っていたから、あまり乗り気ではなかったけど、外に出ることは良い気分転換になるだろうと思った。

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真夜中のさき(6)

「お察しの通りですよ」と、僕は答えた。「なあ、そんなに家に引きこもっていても、身体に悪いだろう。悪い毒も溜まる。どうせ、暇なんだろう?だったら、今夜辺り飲みに行かないか」と神山さんは言った。僕は、「なんで、僕が引きこもっているの知っているんですか?」と聞いた。すると、「会社にかけたら、お前のアシスタントのレイコちゃんが暫く夏休み中ですって言うじゃないか。まあ、お前が仕事もしないで、しかも女もいないのに、夏休みを取るなんて、これは失恋でもしたかなと思って電話したんだよ」と言った。

 「相変わらず、そういう勘だけはいいですね」と、僕は笑いながら答えた。神山さんは、昔から、人間関係とか人間の心の機微を野性的な勘で言い当てることが得意であった。「勘だけは、というのは、少し頭に来るな。まあ、どうせ、そんな状態なんだろうから、今夜、付き合え。悪い毒を抜こう」と神山さんは言った。「悪い毒ですか。まあ、神山さんにお任せしますよ」と言った。神山さんは、「じゃあ、新宿に19時」と言った。僕は、「わかりました」と答えた。

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真夜中のさき(5)

 非生産的な日々を続けた。髭もそらず、髪も整えず、ただ時間が過ぎていくだけの毎日。一週間が過ぎたころ、携帯電話が鳴った。僕は、あまり外部とのコミュニケーションを取りたくなかったけれど、もしかするとナツコさんかもしれないと思って、電話に出た。

 「もしもし」、と、僕は電話に出た。すると、「まだ、なんとか生きているようだな。失恋して、自殺でもしたかと思ったよ」という男の声が聞こえた。僕は、「あー、神山さんですか」と、力なく答えた。「なんだよ、あーって。人がせっかく心配して電話してやっているのに、失礼な後輩だな。どうせ、お前のことを振った相手か何かだと淡い期待でもしたんだろう」と言った。神山さんは、大学の先輩だった。僕は神山さんのことを人間として好きで、悪い遊びをいろいろとした。

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真夜中のさき(4)

 「僕は、確かに、君との付き合いの中で、知らない間に、何か致命的な過ちを犯していたかもしれない。知らない間に、君を傷つけ、そして、君に迷惑をかけていたかもしれない。僕は、恋愛については、不器用な方で、自分のアピールの仕方とか、全く上手くできないんだ。もっと器用ならば、僕の人生はもっともっと違ったものになっているかもしれない。でも、僕は、ただ一生懸命、君の事を愛しているんだ。それは嘘じゃない。適等な言葉でもない。僕は純粋に君と幸せを手に入れたいんだ」

 僕は、部屋の電気を消して、布団に潜り込んだ。でも、すぐに眠ることはできなかった。目を瞑って、ナツコさんのことだけを考えていた。

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2005年の総括

2005年は、まだ2週間あるわけですが、もう2週間しかないわけで、そろそろ総括しなければいけないですね。

今年を表現する言葉、「地すべり的○○」でしょうか。

年賀状の内容も考えなければいけませんね。

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真夜中のさき(3)

 「ナツコさん」、僕は少し涙を目に貯めながら、つぶやいた。君は、これから、僕よりも君に相応しい、君がそうと思う男性に出会い、恋に落ち、二人は結ばれ、幸せを手にするだろう。僕は、その光景を思い浮かべてみた。そして、僕は、その顔もわからない男性に嫉妬をし、ナツコさんを愛しく思った。
 
 「ナツコさん、なぜ、僕ではいけないの?」、僕は夜空を見上げながら、つぶやいた。「ナツコさん、君は、僕の事をまだ、何も知らないじゃないか。なぜ、君は、僕の事を知ろうとせず、すぐに結論を出すことができるの?」、と僕は、夜空に描かれたナツコさんの幻を責めた。

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真夜中のさき(2)

 テレビのニュース番組は、チベットを特集していた。僕は画面の向こうには、淀みのない青い空、手が届きそうな空の高さがあった。こんなところに、ナツコさんと一緒に行ければ、どんなに楽しいだろうに。こんなことを僕は思った。そして、テレビはスイスの様子を映し出した。僕は、再び、その大自然の一風景に、一緒に含まれている僕とナツコさんの姿を想像した。

 ナツコさんのことを思い浮かべながら、僕は秋の夜空を窓を通して、ぼんやりと見ていた。そして、目を閉じると、瞼の奥に、ナツコさんの顔がくっきりと描かれた。僕は、ナツコさんと一緒に、これからの人生を生きていきたかった。一緒に旅をしたり、食事をしたりして、僕は、ナツコさんとの小さな幸せを手に入れ、お互い励ましあったりして、それぞれの夢を追いかける生活をずっと想像していた。でも、現実は、そうではなくて、僕はナツコさんに振られ、僕はこの場にただ一人佇んでいるだけであった。

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真夜中のさき(1)

 僕は、翌日から長い夏休みに入った。特に何をしようというものではなく、家の中で、ただ、何も考えずに、本を読み、DVDの映画を見て過ごした。食料がなくなれば、近くのストアに行って、食料を調達し、簡単に作れる料理を作って食べた。料理を作る気力も特になく、ただ簡単に作れるものを作った。夜になれば、ビールやワイン、ウイスキーを飲みながら、本を読んだ。窓を開けると、風は、いつのまにか、夏の生暖かいものから秋の少しせつないものになっており、僕はせつなさを強く感じた。彼女のいないせつなさ、寂しさ、そうしたものの全てを、いま僕は請け負っていたのであった。

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プロローグ(7)

 「ねえ、レイコさん。僕のわがままを許してくれる?」と僕はレイコさんに聞いた。レイコさんは、「わがまま?」と、尋ねなおした。「うん。僕は、レイコさんの言うように、少し休もうと思う。いつまでになるかわからないけど、少なくは、僕の心の悲鳴が治まって、乾きが潤うまで。その間、僕はレイコさんに、この会社を、仕事を任せたいと思う」

 「きっと、それがいいわ。私は、あなたが、社長が復帰するまで、微力ながら、がんばって、待っています。焦らないで、ゆっくりと回復してくださいね」と、レイコさんは言った。僕の長い夏休みは、そのときから、始まったのであった。

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プロローグ(6)

 「きっと、その表現は合っているね。心が乾いて仕方が無いんだ。自分では、頑張って人生を生きているつもりなんだけど、満足感というか充実感が得られない。全く心が潤わない。僕は、なんのために生きているんだろうって、最近、よく思うんだ」

 「疲れているのね。可哀想なあなた」と、レイコさんは、僕の頭の上に掌を乗せながら言った。「なんだか、こうしていると、安らぐよ」と僕は言う。レイコさんは、「あなたには、きっと休養が必要なのよ。いままでは、きっとずっと掘り続けて、あなたの何かにたどり着いた。こんどは、埋める作業。ゆっくりと掘った穴を埋めることが必要なのよ」と言った。

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愛の流刑地:映画化!!

Yahoo! Newsを見ていたら、愛の流刑地の映画化のニュースが。

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失楽園再び「愛の流刑地」映画化

 作家渡辺淳一氏(72)の話題の小説「愛の流刑地」が映画化され、俳優役所広司(49)が主演することが11日、分かった。小説は日本経済新聞朝刊で連載中。中年作家と人妻の愛と性を描き、サラリーマンの間で「愛ルケ」と呼ばれて人気を集める一方、過激な性描写が「ビジネス紙にふさわしくない」と賛否両論を巻き起こした問題作。役所と濃厚なラブシーンを演じるヒロインは現在選考中だ。
 渡辺作品+日経+映画化+役所の図式は、社会現象になったヒット作「失楽園」と同じ。「失楽園」も、95~96年に同紙で連載され、妻子持ちの編集者と人妻の不倫愛と過激な性描写が話題となった。97年に役所と黒木瞳(45)主演で、東映が映画化。激しいラブシーンも話題になり、興行収入40億円を超えた。
 それから10年。昨年11月に「愛ルケ」の連載が始まると、映像化権をめぐって映画各社、テレビ局が激しい争奪戦を展開。東宝が映画化権を獲得した。「SAYURI」でハリウッド進出も果たした、日本映画界を代表する演技派の役所を起用することが決まった。「失楽園」でも人妻を逢瀬を重ねた末、心中する主人公を好演。製作側はそんな実績も考慮して依頼した。
 ヒロインは、選考の最終段階に入っている。「失楽園」では、黒木が女優として著しい成長を遂げただけに、今回の配役も注目される。メガホンは、ドラマ「永遠の仔」などを手掛けた鶴橋康夫監督。撮影は来春から開始。来秋公開予定。
(日刊スポーツ) - 12月12日9時52分更新
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日本経済新聞の愛の流刑地あらすじはこちらです。

愛の流刑地は、まだ連載は終わっていないのですが、来年のキラーコンテンツになる可能性がかなり高まっていて、映画化も嘱望されていたわけです。映画化は再来年ぐらいかなと思っていたのですが、来秋には公開ということですね。

主役の菊治役は、やはり役所広司ですか。ここは、あまりサプライズはないわけで、順当な配役でしょう。このブログでも、下記のように以前に書きました。

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「原稿落ちる??」(Posted by shumpei on November 13, 2005 at 11:49 PM)

結局、「愛の流刑地」とは、どこにあるのだろうか。映画化については、ふゆか役は、鈴木京香か石田ゆり子と言われていますが、実は菊治役の適任者はいるのでしょうか。役所広司?ここは、小林稔持とかどうでしょうか?でも、例えば、舘ひろしもいいかも。
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菊治役は竹中直人でも良かったかも。

あとは、ふゆか役ですが、こちらは、やはり鈴木京香か石田ゆり子でしょうか。
少し時間のあるときに、タレント名鑑とにらめっこして、配役予想をしてみたいと思います。

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プロローグ(5)

 「なんだか、疲れた気がするよ。疲れているんだけど、夜、寝るときに、電気を消すと、その暗闇がとてつもなく怖くて、眠れなくなるんだ」と、僕はレイコさんに行った。

 「孤独に堪えられないという感じなのでしょうか」と、レイコさんは言った。

 「うん。それに近いかもしれない」と僕が言うと、「あなたには、回復する時間が必要なのかもしれないわ。夢の中で、起きたこと、現実の世界で起きたこと、そして、あなたが最も心の支えにしていたナツコさんとのこと。全てが、一度にあなたに降りかかってきて、あなたは、きっと、溺れかかっている子どものように、一生懸命、水面から顔を出そうとしている状態なにかもしれない」と、レイコさんが言った。

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さようならのクリスマス

クリスマスというのは、物語を考えるにあたっては、いろいろな材料を提供してくれるわけですが、あまり良いストーリーが思い浮かばない。どちらかというと、哀しいストーリー。クリスマス、雪、別れ。別れ方はいろいろとありますけど、銃声が夜空に響いて、腕の中で眠るとか、人ごみの中で刺されて冷たい地面の上で死んでいくとか。

どちらかというと、幸せの絶頂の中で、最後に撃たれたり、刺されたりして、寂しく死んでいく姿、身体の上に、少しずつ白い雪が積もっていく。そして、無常にもきよしこの夜のオルゴールのメロディが哀しく響く。

手には、子どもや愛しい人へのプレゼント。コートが血に染まっていく。

さようなら

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プロローグ(4)

 僕は、「うん」と答えた。

 「ナツコさんとどのようなことになったのかは知りませんけど、諦めるのか、諦めないのかをはっきりした方がいいと思いますよ。社長の様子がさらにひどくなったのは、夢から覚めた後、ナツコさんに会いに行ってからなんですから」
 僕は、夢から覚めた後、僕が好意を抱いていたナツコさんに会いに行った。ナツコさんに会ったとき、僕は自分の気持ちを伝えた。「僕はあなたが好きだ。僕にはあなたが必要だ」と。そうすると、ナツコさんは、少し困った顔をして、少し俯いて、そして、言い難そうに、「ごめんなさい。私はあなたの気持ちを受け入れることはできないわ」と言った。僕は、「残念だ」と答えた。ナツコさんは、何も答えなかった。僕は、「ナツコさん、帰ろう」と言って、彼女をタクシーに乗せ、僕は、少し夜道を散歩した。

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プロローグ(3)

 「最近、僕は夜、眠れないんだ。夢を見ることが怖いし、なぜだか、寝付けない。いろいろなことを考えすぎて、ゆっくりと眠れないんだ」と、僕は言う。

 レイコさんは、「それこそ、まずは、仕事のことは忘れて、ご自分のことを考えるべきですよ。いま、社長に倒れられてしまったら、この会社は立ち行きません。細かい仕事は、私でもなんとかできると思います。重要なご判断だけ、社長にしていただければ、なんとかなります。おこがましいかもしれませんが、社長のためにも、会社のためにも、がんばりすぎないでください」

 僕は、「うん」と答えた。

 レイコさんは、「ナツコさんのことも、原因なんですよね」と聞いてきた。

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プロローグ(2)

 これは、レイコさんと話し合った結果だった。僕には、少しゆっくりとした時間が必要だろうと、レイコさんは言った。様々なものから回復する。それが、僕には必要だろうと。数ヶ月前、僕には不思議なことが何度も起きた。夢の中で出会った昔の恋人が亡くなったり、夢の中で死んだ人が現実にも亡くなったり。僕は、不思議な蝋燭に導かれて、自分の夢の中に旅立ち、僕の最初の女性に出会ったりした。そのとき、僕が抱える欠落というものが、何なのかを知った。不思議な連続の中で、僕は、得たものも失ったものもあった。その失ったもののひとつは、仕事への情熱であった。

 レイコさんは、カウンセリングに行くべきだと、僕に言った。「この会社には社長が必要なんです。でも、いま、社長の精神状態では、仕事をすることは、社長をさらに苦しめることになると思います。一度、仕事のことは忘れて、ゆっくりした方がいいと思います。カウンセリングに行くとか、そういうのも良いと思いますよ」

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プロローグ(1)

 チン!
 冷凍ピザのあたため解凍が終わった。僕は電子レンジから、解凍した冷凍ピザを取り出した。僕の最近のお気に入りは、ピザをつまみながら、DVDを見ることだ。大きなハイヴィジョンテレビに映る昔懐かしい女優を眺めながら、ぼんやりとピザをつまんだ。ストーリーは、あらかたわかっているのだが、映画は見れば見るたびに、新しい発見があり、味わいを感じる。真夜中に、昼間会ったことを忘れて、一人で、ぼんやりと、ピザをつまみながら、DVDを眺める。

 DVDを何本か見終って気が付くと、すでに朝の7時だった。僕は、この数ヶ月間、仕事を少し休んでいた。仕事は、ある程度、僕のアシスタントのレイコさんがこなすことができた。レイコさんは、アルバイトを雇い、僕の代わりに仕事をしていた。僕は、重大な決断などのときにだけ、会社に行き、レイコさんに判断を伝えた。レイコさんは、その判断に従い、目の前の仕事を黙々とこなしていた。

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テーマ曲

昨日、あるところで、たまたま「危険なアネキ」を見ました。「危険なアネキ」の主題歌は、平井堅のPOP STARだったんですね。両方が結びついていなかったので、新たな発見です。
まあ、ドラマを見ていて、フレッシュな恋愛ドラマの脚本が書きたくなりました。ぼくの場合は、どうしてもへそ曲がりなもので、くせがあるので、ピュアなラブストーリーが書けません。笑いを取りに行くか、シリアスに行くかのどちらかです。

先週まで連載していた「今夜・・・」のテーマ曲は、「瞳をとじて」でした。
POP STARに乗るようなピュアでフレッシュなラブストーリーもクリスマスに向けて書きたいと思います。

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半島のさき:予告編

ぼくが、「半島のさき」で書きたいのは、人間の弱さの部分です。人間は、こんなにも柔で脆い存在なんだということを恋愛を通じて描きたいと思っています。「今夜、夢の中で君に出逢う」は、人間の欠落をコンプレックスやトラウマと結び付けて描いたわけですが、もっともっと人間の弱さを描きたいと思っています。

人間の内面性、真理について、考えることができればと思っています。

よろしくお願い申し上げます。

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お礼

 7月の本格的連載開始より、お読みいただきまして、ありがとうございました。「今夜、夢の中で君に出逢う」は、お陰様にて、約5ヶ月のロングランをなんとか走り切ることができました。執筆中に、まろまろ堂さんからは、いくつか有益なご指摘をいただきました。また、お名前は出しませんが、執筆にあたって、いろいろとご意見を伺った方がおります。皆様に心より御礼申し上げます。なお、この物語は当然ながら、フィクションです。物語中に登場する人物、企業、団体等は全て架空のものです。

 この「今夜、夢の中で君に出逢う」は、構成などをチェックした後、出版いたしたいと考えております。その際は、なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

 明日より新作「半島のさき」を連載開始する予定です。引き続き、なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

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あとがき

 ぼくが、この小説の構想を始めたのは、実は去年(2004年)の春のこと。松井彰彦さんの「市場の中の女の子(PHP研究所)」を読んで、ぼくは経済学の知識をベースに松井さんのような物語が書きたいと思ったのが、きっかけだった。

 そういうわけで、実は、プロローグの初めの何行かは、去年の春に書いていて、それから一年間ぐらいの断絶があって、今年の春にもう一度、書き始めようと思って、改めて構想をしなおしたというものだ。

 誰か一人だけ好きな作家を挙げてくださいと言われたら、ぼくは村上春樹さんを挙げるだろう。「ノルウェイの森(講談社)」が出版されたとき、ぼくは小学生とか中学生だった。その頃は、歴史物が好きで、あまり現代小説に興味を示さなかったから、ぼくが「ノルウェイの森」にたどり着いたのは、それから約10年後だった。初めて読んだ村上春樹さんの作品は、「国境の南、太陽の西(講談社)」で、二度目の大きな失恋をしたときだった。

 「国境の南、太陽の西」、「ノルウェイの森」に登場した主人公は、いずれも一人っ子であって、昔付き合っていた彼女にも指摘されたように、その主人子の言動は、昔のぼくに重なる部分が多かった。そういう意味で共感した部分が多かったというのも、村上作品にぼくが魅せられた最初の理由だった。

 ぼくは、米国に3週間ほど、勉強のために滞在したのだけれど、その出発の前日の夜に、ある人から村上春樹作品の「羊をめぐる冒険(講談社)」と「ダンス・ダンス・ダンス(講談社)」を薦められた。ぼくは、翌日に成田空港の書店で、計4冊の文庫を購入した。米国の電車は日本と違って、待ち時間が長かったし、乗車時間も長かったし、また就寝前に、ぼくはこの4冊を読んだ。そうした中で、ぼくは村上さんのような小説が書きたくなった。

 この作品は、前半部分の「赤い蝋燭」編までを米国で、それ以降を日本で執筆した。まず、ぼくがしたことは、「夢」の世界をできるだけ忠実な絵にすることであった。そうして「夢」の世界観をしっかりした上で、「現実」の世界を描く努力をした。そうすることで、「現実」の世界から一歩離れた立ち位置から、つまり、あまりコミットをしない形で人間そのものを描きたかったのだ。この物語には、ふたつの視点があって、ひとつは「僕」の視点である。もうひとつは、物語を語る客観的な「ぼく」の視点である。ぼくは、ある部分では「僕」と同化し、ある部分ではストーリーテイラーとして、物語を語る。
 
 この物語で、ぼくが書きたかったのは、人間の弱さだ。人間には、完全な人間なんていなくて、必ずどこかしらに欠落を持っているだろし、それが人間らしさなんだと思う。でも、それをぼくたちは、社会を行きぬく中で、その欠落をできるだけフォローするように努力をしている。自分の欠落を知っている人は素晴らしいと思う。たぶん、多くの人は、その欠落にさえも気が付いていないのではないかと思う。

 そもそも人間の成長というものは、そうした欠落を認識すること、そして、その欠落をできるだけ小さくしたり、修繕したりすることなんだと思う。

 この物語をぼくはある人に捧げたいと思って書き進めた。ぼく自身、この物語がどのようなメッセージを持つものなのか、わからない。また、それを自分自身で解説することもあまりしたくない。だから、ぼくが考えているメッセージとは全く違うメッセージをその人に伝えてしまうかもしれない。でも、ぼくは、その人にこの物語を捧げたいと強く思って書き続けた。

 いつか、夢の中ではなくて、現実の世界で君に出逢えますように。

矢尾板俊平

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エピローグ(3)

 「じゃあ、手紙は捨てますからね」と言った。「よろしく」と僕は答えた。「ところで、なんで、レイコさんが僕の部屋に入れるんだっけ?」と聞いた。すると、レイコさんは、「無用心にも鍵が開いていたんですよ」と言った。僕は、戸締りはしっかりしたはずだった。

 「ちゃんと、閉めていたはずなんだけど」と僕が言うと、「でも開いていました」とレイコさんは強く言った。僕は「おかしいなあ」と言いながら、夢の中で、鍵を開けたことを思い出した。

 僕は、「レイコさん、今日は休みにしよう」と言うと、レイコさんは、「それが賢明ですね」と言った。

 「どこかドライブに行こうか」と僕が言うと、「じゃあ、三浦海岸でも軽く」とレイコさんは答えた。「それはグッドアイディアだ」と僕が笑いながら言うと、レイコさんも笑った。

 とりあえず、僕は今、生きている。辛いことや悲しみがあったとしても、それを正面から受け止めて、そして喜びと楽しさを、小さいながらも見つけながら、一日を生きていこう。何も格好付けることなく、着飾ることなく、僕は僕のままで。車を走らせながら、僕はそう思った。

 そして、ドライブから戻ってきたら、なつこさんに電話をして、会う約束をする。そして、僕の気持ちを伝えることにしよう。

 「僕は君のことが好きで、僕は君のことが必要だ」と。

END

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エピローグ(2)

 レイコさんは、「えっ?」と、その呟きを確認するように、言った。僕は、「レイコさんに、キスをしてもらえるなんて、感激だよ」と言った。レイコさんは、少し怒った感じで、「キスなんかしていません。ただの人工呼吸です」と言った。

 「人工呼吸?僕は溺れていたの?」と聞くと、「人に心配だけかけて、のんきなもんですね」と怒った。そして、「心配して損した。死んじゃえば良かったのに」と言った。

 僕は、横になりながら、「ごめん。ごめん。今日は、何日?」と聞いた。

 レイコさんは、「一晩だけしか経っていないですよ。今朝、一緒に旅立とうとして事務所で待ってたんですけど、なかなか社長が来なくて、もしかすると、と思って、部屋に来たら、案の定、一人だけ旅立っていて。置手紙なんかもしちゃって」と言った。

 「今、何時?」と、僕が聞くと、「13時です。大幅な寝坊ですよ。普通だったら」と、レイコさんは答えた。僕は、「ごめん。ごめん」と言った。

 「それで、解決したんですか?」とレイコさんが聞いた。僕は、「たぶん」と答えた。

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