愛と欲望の絶え間ない交換-不安定的な秩序・市場-(31)
麻衣への手紙を書き終えて、僕はグラスの中のボーモアを飲み干した。そして、窓から流れ込んでくる夜風を受け止めて、僕は月を見上げた。夜空を見上げるなんて、いつ以来だろう。僕は、感慨深くなっていた。冬は東京でも夜空を見上げれば、オリオン座や北斗七星ぐらいの大きな星であれば、見ることができるが、夏は、あまり星が見えない。僕が星を見ようとしていないのか、そもそも見られないのか、それはわからないのだけれども。だから、秋口に、ふと夜空を見上げて、オリオン座が目に入ったときは、冬の訪れを知り、そして寂しい気持ちになる。冬は、やはり「滅び」の季節である。春は「誕生」もしくは「再生」、夏は「成長」、秋は「実り」、そして冬に「滅びる」。季節は人生のように循環する。だから、冬になると僕はとても悲しい気持ちになる。次の春がとても待ち遠しくなる。
ふと、僕は、僕の家の近くにあるコンビニエンストアに勤めているナカノさんとコバヤシさんのことを思い出した。話をしたことすらないが、僕は少なからずナカノさんとコバヤシさんに好意を持っていた。そして、近くの本屋さんに勤めているマエハラさんのことも思い出した。3人は今日も元気でいるだろうか。帰り際に、コバヤシさんは、いつもと変わりなく、コンビニエンスストアのレジに立っていた。彼女に別れの言葉を伝えなかったことを、いまさら、後悔した。


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