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愛と欲望の絶え間ない交換-不安定的な秩序・市場-(29)

吉澤奈津子 様

前略
 さきほど、電話で話したばかりなのに、こうして手紙を書くなんて、なんだか不思議な感じです。ただ、僕の肉体が消滅してしまうのにあたって、僕は、この現実の世界に生きた証として、僕の気持ちを言葉として残しておきたいと思ったわけです。

 なぜ、僕が消滅したのか、それはなかなか上手に説明することができません。この手の説明は、僕よりもむしろレイコさんの方が得意かもしれません。なつこさんにとって、僕なりレイコさんの説明は、納得しがたい、非論理的な話に聞こえるかもしれません。僕も未だに何がなんだかわかりません。しかし、何かに巻き込まれていること自体は事実です。そして、なつこさんがこの手紙を読んでいるということは、僕の肉体が消滅したことも紛れもない事実なわけです。

 その事実を科学的に説明することは、いまの人間の文明力では、無理だということだけはわかっています。技術や科学が進歩すれば、論理的に説明ができるかもしれません。進歩というものは素晴らしいです。思ってもみなかったことができるようになったり、理解できるようになります。例えば、インターネットや携帯電話。10年前、僕たちが高校生だったころ、もしくは中学生だったころ、こんな情報社会がやってくるとは、僕に限って言えば、想像もできませんでした。確かに、21世紀になったら、車が空を飛び、宇宙ステーションで生活をするというような生活にはほど遠いわけですが、もしかすると、21世紀の世紀末には本当にそういうことになるかもしれませんね。

 この手紙では、そういうことを述べようとしているわけではないのです。だから、くだらないと思わないで、もう少し読んで欲しいと思います。

 僕は、なつこさんのことが好きでした。否、僕はなつこさんのことが好きです。電話の最後で会ったときに話したいという重要なこととは、この気持ちを伝えたかったということです。僕は、なつこさんと一緒に、時には笑い、時には泣き、喜びや悲しみを分かち合いたかったです。でも、それはもう叶わぬことになってしまって、それが僕の唯一の心残りです。

 もっと、僕はなつこさんと時間を共有したかった。もし、メビウスの輪のように、再び、あなたに出会えることを心から願っております。

 あなたには、素晴らしい才能があると思います。自信を持って、その才能を十分に発揮して、一人でも多くの方に幸せを感じさせてあげてください。 さようなら

草々

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