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政策戦略論

 ぼくは、「総合政策学部」を卒業して、現在は、「総合政策修士」です。そして、現在は、「総合政策博士」を目指しております。

 最近、ふと思ったことなのですが、いわゆる政策系スクールでは、「戦略論」は、どの程度扱われているのでしょうか。

 千葉商科大学で、2002年の夏に「政策サマーキャンプ」を開催したとき、加藤寛先生が、「政策には理念がいる。歴史的視点がいる。戦略がいる。」ということを、メインシンポジウムの紹介の欄でおっしゃりましたが、それを会議の際にお聞きしたとき、その言葉がぼくの胸に深く刻み込まれました。

 「戦略」というと、「軍事戦略」、「経営戦略」、「選挙戦略」というようなことを思いつきます。戦略の定義を、野中他の「戦略の本質」に求めれば、「社会現象としての戦略現象は、主体間の相互行為(作用)の因果連鎖として展開する」とし、「主体の主体たるゆえんは、その行為の意図性、目的性にある。戦略性、つまり戦略的であるということは、相手の出方に応じてこちらの出方を変えることであり、こちらの出方に応じて相手の出方が変わることである。主体としての自分の行為が、自分以外の主体の行為と相互作用を営むことを意味する。戦略現象とは、意図を有する主体間の、このような相互作用にかかわっている(pp.299-300)」ということである。

 戦略という言葉は、なんとなく闇のイメージが付いていそうだが、「参謀」とか「策士」とか、何事にも戦略が求められるのである。つまり、政策には、「政策目標」があり、「政策手段」があり、「政策戦略」が必要なのであろうと思う。「何をどのように何によって行うのか」という問いである。ここで、重要なのは、「何を」ということがわかっていても、「どのように」ということがわかっていないということが多々ある。

 では、最適戦略を立案するには、何が必要なのだろうか。

 ひとつは、「過去・歴史から学ぶ」ということである。過去の成功事例、失敗事例を的確に分析し、教訓として生かすということが重要であろう。その上で、生きた学問とするために、ケーススタディ的に学ぶ必要がある。これは、講義で教わるというよりは、訓練して、「戦略的思考」を育てるということであろう。

 戦略が戦略たる最もな現象は、やはり戦争である。そこで、ここで提案は、「戦史」を題材に、ケーススタディ的に訓練する講義である。もしくは、基礎編が「戦史」で、応用編が、「経営」や「行政」という現代的テーマにするという構成でもいいかもしれない。

 次に、「情報」である。的確な戦略を立案するためには、「情報」を「収集」し、「分析」し、「判断」する能力が必要である。瀬島龍三氏は、加藤先生との共著の「戦略なき国家に明日はない―戦後50年の日本の検証と今後の行方を示唆」で、「第一がいうまでもなく情報の「収集」。第二が情報の「査確」」、そして「情報の第三の段階が「判断」ですね。そして第四が「対策」。」と述べている。

 収集と言う意味には、収集技術だけではなく、より情報が収集できるような環境作りをする能力も含まれるような気がする。ここで人間関係作りとかが重要になってくるのであろう。
 
 情報を制する者が、ほとんどの場合、さまざまなケースで勝者となっているのは、歴史が教えてくれる。

 また、「情報」に関して言えば、戦略論として、「情報の出し方」というのも重要だし、「世論形成」、「空気形成」というのも重要だ。日露戦争のときに、重要な役割を果たしたのは、明石元二郎大佐が後方支援として、ロシア革命の空気を醸成したことにあるのは、よく知られた事実である。このあたりは、「インテリジェンス」の議論がかなり重要になってくる。

 さらには、「広報(Public Relations)」の能力が重要になってくるだろう。これまで、「広報(PR)」というのは、一方的に情報を出すという、どちらかというと消極的な「広報」だった気がする。そうではなくて、積極的に「演出」したり、「空気」を作り出したり、「状況(シチュエーション)」を作り出す「積極的広報」が重要になる。
 
 また、時には主体間の相互作用の中で、妥協点を探す作業が必要になる。その際に、交渉という戦略行為が行われることになるが、このときも交渉のカードをどのように持つのかということが重要で、有効なカードを持っていなければ、妥協点が自分にとって不利なものとなる。このとき、本当に相手に対して、有効なカードではなくても、有効なカードのように見せることや相手を不利な状況に追い込むような状況作りで切り抜けるということも可能であろう。

そう考えると、戦略というのは、3段階で考えられる。大きくは、基礎的行為、基本戦略、応用戦略(戦略行為)である。それを下記に示した。

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応用戦略(戦略行為):行動実施・広報・交渉
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基本戦略:理念・目標の計画・情報分析・判断
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基礎的行為:
情報収集(マーケティング、社会関係、人間関係作り、諜報網の整備等)
 思考訓練:ケーススタディによる想定問答・シミュレーション
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 ここで、重要なのは、いかなるときも、基礎的行為を継続し、戦略の準備を常に行っておくことにあると言える。

 さらに、付け加えれば、戦略の醍醐味は、「逆転」を可能にすることである。勝敗は兵家の常であり、オセロのようなもので、ダイナミックなものである。きっかけさえあれば、「逆転」つまり、白から黒に変えることは可能である。だから、戦略は楽しいのであり、戦略は勝敗よりも「美しい戦略」に拘りすぎて、失敗をするということもある。いわゆる「策士、策に溺れる」ということもある。

 つまり、一方は、「逆転」をするための戦略を立案し、実施し、もう一方は「逆転」を阻止するための戦略を立案し、実施するということに他ならない。

 圧倒的不利な状況において、「逆転」ならしめる戦略とは何か。瀬島さんは、上記の本で、「すべてが手詰まり状態になった時に大事なのは、空気を転換することです」と、「一点突破」が重要だと言っている。

 織田信長の桶狭間の戦いはまさに「一点突破」なのだろう。

 このほかにも、「組織」もしくは「組織運用」ということも重要な要因だし、「決断」も重要。
 この点については、また少し考えがまとまったら、書くことにしよう。

 「政策戦略論」というような本が書けそう。でも、「政策の失敗の歴史」をケースで分析するというのは面白いかもですね。

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