悲しみのワルツ-日常の中の僕-(19)
午後3時過ぎ、レイコさんが喪服姿で事務所にやってきた。「遅くなってすみません。社長の言葉に甘えて、帰ってから一眠りしてしまいました」と、謝った。僕は、「気にしないでいいよ。今日は夕方前に来ればいいよと言ったんだから、まだ早い方だよ」と笑った。そして、なつこさんが来たこと、彼女が転職をしたことをレイコさんに話した。レイコさんは、「じゃあ、早速、今夜行ってみましょうよ。私も会いたいわ、なつこさんに」と言った。僕は、「今夜行くのかい?それは、何が何でも早急すぎないかい?」と言った。レイコさんは、「そう思うのは、なつこさんのことが気になるからでしょ。タイミングを逃したら、後悔しますよ。恋愛は、駆け引きなんですから。」と笑った。僕は、「君の言っていることが理解できなくて、困っちゃうよ」と言った。レイコさんは、「恥ずかしがっちゃって。社長もシャイなところがあるんですねぇ」と言い、お得意の「うふふ」という笑いをした。
僕たちは、夕方の5時過ぎに、事務所を出た。霞が関の駅から丸の内線に乗り、新大塚で下りて、石和裕美の実家の近くのお寺に向かった。ちょうど、お通夜が始まる頃で、石和裕美の友人や知人、たぶんご近所に住むお爺さんやお婆さんが列を作っていた。僕は、会社名でお香典を包み、記帳した。しかし、やはり僕はお焼香するべきではないと思った。そこで、お焼香は、レイコさんに任せ、寺の外から祭壇に向かって手を合わせ、冥福を祈ることにした。
レイコさんが、お焼香を済ませて、戻ってきた。レイコさんは、無言だった。僕もレイコさんに、話しかけなかった。そして、そのまま駅に向かって、歩き始めた。そのうち、レイコさんが、「少し気分転換に、夜景でも見に行きませんか?」と言った。僕は、「うん」と答えた。
僕たちは、丸の内線で池袋まで行き、山手線で渋谷に行き、東急田園都市線で三軒茶屋まで戻った。そして、僕の車に乗り、恵比寿、三田を抜けて、湾岸沿いに出た。そこで、高速道路に乗り、横浜に向かった。
僕はみなとみらいの夜景が海の向こうに見える埠頭に車を止めた。


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