本当は、この夏に一本新作の脚本を書くつもりでした。今年の冬にゼミ合宿の出し物用として、TVドラマ「幸福の王子」を題材にして、脚本を書きました。あれは、書いている間に、原作とだいぶ違ってきて、カウンセリングを舞台に、自らの罪を認め、人間の持つ精神的な闇を表現しようというものになりました。ただ、出し物として上演した際には、さらに話が変わって、「ダメ男」を描くに過ぎなかったんですが。
今夏、書こうと思っていたのは、たぶんもう当分書けないので、ネタをバラしますが、「スポーツ選手の挫折と成長」を描きたかったのです。サッカー選手の話を書こうと思ったんです。
試合中に怪我をした荘一郎が挫折を乗り越えて、人間的に成長し、チームの危機を救うというありきたりの話なんですが。
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(概要)「エースストライカー」著:矢尾板俊平
荘一郎は、Jリーグ一部「調布スパイダーズ」のエースストライカー。しかし試合中に相手選手との接触で、靱帯が断裂してしまう。手術後、恋人の神奈子に支えられながら、リハビリも順調に進んで、身体はいつでも試合に出れるところまで回復する。しかし、彼はいつまでも試合に出る、練習にをすることすらできなくなっていた。怪我は彼に精神的なトラウマを与え、サッカーボールを蹴れなくなっていたのであった。
「調布スパイダーズ」は、荘一郎が欠場してから、連敗を重ねる。荘一郎のパートナーであり日本を代表するゲームメーカーである幹郎の決定的なパスを受けることが出来るストライカーがいないので、得点を奪えないのである。そこで、「調布スパイダーズ」は荘一郎の代役として、ブラジル代表のFWミッチェルを獲得し、得点力を回復させる。
しかし、ミッチェルはかなりのわがままで、監督の俊明は手を焼く。
監督の俊明は神奈子の兄であり、荘一郎や幹郎の高校以来の先輩であった。俊明は早く荘一郎にチームに戻ってきて欲しい。新聞紙上では、ミッチェルへの賞賛と荘一郎不要論が躍り出る。そのような中、ボールを蹴ることができない荘一郎は、失踪する。
そのころ、スペインリーグ一部のクラブチームより「調布スパイダーズ」にミッチェル獲得のオファーが来る。このオファーは「調布スパイダーズ」のものよりも比較にならないほど良く、ミッチェルは移籍を希望する。俊明、そして「調布スパイダーズ」のオーナーである竹下は、契約に基づいて、そのオファーを断る。しかし、ミッチェルは一方的に契約を解除し、チームを離れる。契約時に、それを可能にする条項が入っていたのだった。
ミッチェルが退団した「調布スパイダーズ」は、再び連敗を重ねていく。俊明は荘一郎の行方を捜すとともに、南米留学中で誰からも忘れられていたMF裕治を帰国させる。
その頃、神奈子は高原の山小屋で荘一郎を見つける。荘一郎は「引退」の二文字を神奈子に告げる。それを聞いた神奈子は荘一郎の元を去る。
「調布スパイダーズ」の中盤は安定するが、得点に結びつかない。いよいよ「調布スパイダーズ」のJ2降格の現実性が高まってくる。
神奈子の話を聞いた俊明は荘一郎を訪ねる。監督としてではなく、友人として先輩として、荘一郎の本心を聞くためだ。荘一郎の決心は固い。俊明は荘一郎に指導者になる道を進める。そして、ドイツ行きの航空券チケットとコーチ留学先への紹介状を置いていく。「来シーズン、調布スパイダーズのコーチとして一緒にピッチを立とう」
「調布スパイダーズ」の連敗は止まらず。いよいよ次の試合に負ければ、J2降格が決まる。
荘一郎は、空港行きのバスに乗っている。失踪以来、新聞もTVも見ていない。隣の席の男性が読んでいるスポーツ新聞の見出しに書かれている「調布スパイダーズ本日敗戦ならJ2降格決定」「福沢監督解任も決定的」の言葉が目に飛び込んでくる。
荘一郎は空港から幹郎に電話をかける。幹郎は「それは本当だ。これから試合なんだ。どうなるかわからんが、お前も元気にやれよ」と電話を切る。荘一郎は飛行機をキャンセルし、スタジアムに向かう。
試合前半、裕治の2列目からの飛び出しで得点チャンスはあるものの得点に結び付けられない。俊明、幹郎、裕治、そしてその他のチームメート、サポーター全ての者が共通して理解しているのは、絶対的なストライカーが必要であるということであった。そのストライカーはミッチェルでもなく、誰でもない、荘一郎だ。
前半終了間際、「調布スパイダーズ」は失点する。会場全体が沈んだ雰囲気となる。
ロッカールーム。「荘一郎さんさえ居てくれれば」とつぶやく声が聞こえる。幹郎「あいつはもう日本にいないんだよ」、裕治「誰かに頼るのはやめましょう。確かに荘一郎さんがいてくれれば、逆転できるかもしれない。でも、今は僕らでやるしかないんです」、俊明「残り45分、悔いを残すな。集中力を切らすな。必ずチャンスはある」
後半開始、「調布スパイダーズ」は攻めあぐねる。なかなか得点できない。
後半20分、ベンチに荘一郎が現れる。
俊明「荘一郎」
荘一郎「監督、俺を出してください」
俊明「お前、なんて格好しているんだ。そんな格好でゲームに出れるわけないだろ。3分で着替えて来い」
荘一郎が背番号「9」のユニフォームに腕を通す。「神様、もういちど、俺にボールを蹴らせてください」
俊明「アップは?」
荘一郎「空港からスタジアムに来るまで、十分アップしましたよ」
俊明「よし。荘一郎、何がなんでも得点だ。ここがお前の出発点だ」
後半25分、荘一郎がピッチに入る。
幹郎「荘一郎、よく戻ってきてくれた」
裕治「お帰りなさい、荘一郎さん」
荘一郎「エースはな、ピンチの時に、遅れてやってくるもんなんだよ」
試合が再開。幹郎が荘一郎に最高のパスを出す。
試合終了後、ロッカールームを出ると、神奈子が待っている。
神奈子「荘ちゃん、信じていたわ」涙を流す
荘一郎「ハットトリック達成。俺だってやればできるんだよ」小さい声でぼそっと、「今までごめんな」
二人で会場を出ていくところを、俊明、幹郎、裕治が見ている。
裕治「反撃開始って感じですね。J1に残って、来年は優勝を目指しましょうよ」
幹郎「気が早いよ。まあ、荘一郎には、今までサボっていた分働いてもらうけどな。いつも以上に厳しいパスを出してやる。覚悟しとけよ」
俊明「再就職先を探さなくてもよさそうだな」と、就職情報誌を破り捨てる。
裕治「あれ、監督、うちクビになったらユース代表の監督の話があるって聞きましたけど。惜しかったですね」
幹郎「監督、残念ながら、これから連勝するから、その話、早めに断っておいた方がいいですよ」
俊明「じゃあ、断っておくか」
荘一郎が3人の方を向く
荘一郎「お前ら何やっているんだよ。監督も一緒になって」
俊明「お前の復活を祝ってやろうと思っていて、待ってたんだよ」
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